とことん「本質追求」コラム第136話 伸びている会社や営業マンの「伝える技術」

 

「新しい価値を創造しているつもりですが、社員にも顧客にも上手く伝えられません。どうすれば上手く伝えられるのでしょうか?」

 

先週のコラム「営業とマーケティングの違いとは?」を読んだ方からご質問のメールを頂きました。

以前、セミナーを受講して頂いた方で、スグにイメージがついたために個別具体的にアドバイスをさせて頂きましたが…

 

価値を伝えると言う事は、意外にも難しいことなのかも知れない…改めてそう思った一件でした。

 

分かっているようで、分からない。

出来ているようで、出来ていない。

 

クライアントさんにアドバイスするときにも時々感じていたことです。

もちろん、プロジェクトを共にすることで数ヶ月後には見違えるように「伝える技術」が身に付いてくるのですが…

 

改めて冷静に考えると、「こうやって価値を伝えるんですよ…」と私自身も明確なモノサシを持っていなかった…と反省させられました。

 

具体的なケースを聞くと「それなら、こうやって伝える方がいいですね!」とクリエイティブはしています。

すると「なるほどー」とご納得頂くので、それで良し!としていたのです。
だから、大多数に通用する「価値を伝える技術」となると考えたこともなかったわけですが…

 

それは甘えではないか…と今回のご質問を受けて感じたのです。

 

なので、価値を伝えるモノサシを作り、それに従えば平均点以上のアウトプットができるように「思考の枠組み」を作ってみようと試みてみました。

 

それが今回のテーマ「伸びている会社や営業マンの伝える技術」です。

 

先ずは、よく有りがちな過ちを例に挙げてみましょう。

 

典型例は、当社の商品を使えば「あんな事が出来ます」「こんな事ができます」と市場や顧客にコミニケーションしているケースです。

 

「パソコンやスマホがなくても、全国に散らばる営業マンの日報集計が瞬時に出来ます」

「外出先からスマートフォンを使って遠隔操作でカギをかける事が出来ます」

「1日一粒で、成人に必要な栄養素が全て摂取することが出来ます」

 

よく見かけますよね?

このようなセールスの切り口。

 

しかし、残念ながらこれでは50点レベル…平均点以下のため顧客のハートに響きにくいのが現実です。

 

この3つの共通点は、「〜できる」と歌っている点です。

「〜できる」と言うのは、往々にして売り手側からのメッセージであり、機能や性能を表現する場合が大半です。

 

売り手側の主張で、機能・性能を伝えて響くのは、全体市場の16%程度しか居ません。
商品ライフサイクルにおける「導入期」の住人である「冒険者」や「挑戦者」が、このような表現に反応してくれるだけです。

 

 

彼らは、特定分野における知識を有しており、売り手のメッセージをより深く理解しようとする姿勢で接触してくるために、理解力は抜群です。

 

どのように理解するかと言うと、「それが出来るのであれば、私の置かれた環境はこのように変化するだろう」と価値を受け取ったあとのシーンをイメージしてくれるわけです。

 

つまり、本質的に買い手がモノを買う行為というのは、「価値を受け取った後のシーン」をイメージできた場合のみなのです。

 

そこから考えるとシビアな現実が浮き彫りになってきます。
16%以外の人達である「84%の大多数」は、「〜できる」というメッセージを「価値を受け取ったあとのシーン」に変換出来るかと言うと、これは否定的に捉えた方が、ビジネス運営上は安全です

 

基本、変換できない…という前提に立つことが大切なのです。

 

そうなると「〜できる」というメッセージから「価値を受け取ったあとのイメージ」を変換しなくて済む表現に変える必要があります。

 

そうダイレクトに「〜なる」と表現することで相手に伝わりやすくなるのです。

 

天才的な営業トークの持ち主であるジャパネットたかたの社長、高田明氏も「これを買う事で生活がどのように変わるか…」に焦点を当ててセールストークを組み立てています。

 

これは事実でさえあれば、主観でも構いません。

私(当社で)は、こうなった…でも良いのです。

 

もちろん、エビデンス(科学的根拠)があった方が説得力の強化に繋がります。

メーカーであれば、エビデンスを増強していく企業努力は、小手先の営業力強化よりも、強力な販売力になることでしょう。

 

いずれにせよ「〜できる」から「〜なる」というメッセージに変えることが販売力の強化に繋がっていくのです。

 

商品の企画・開発も同様です。

「〜できる商品」を作るのではなく「お客様が〜になる商品」を作り込むのです。

 

前述の通り、「〜できる」は、売り手の言葉であり、機能や性能を表現するケースが大半です。

しかも「〜できる」というメッセージは、私たちはやることはやっても、なるかどうかはお客様次第ですよ…という隠語も見え隠れします。

 

買い手というのは敏感なもので、この隠語を読みとるとスグに購買行動を中断してしまいます。

だから「〜できる」というメッセージは危険なのです。

 

反面、「〜なる」というメッセージは、買い手の目線にたった言葉であり、価値やベネフィットを表現するケースが大半です。

そして、「〜なる」と断言する以上、我々売り手として「お客様に新しい未来を見せます」という力強いメッセージも同時に伝わるため、安心して購買行動を起こしてくれるようになるのです。

思うように商品が売れていかない…。

思うように営業マンが商品を売ってこない…。

 

そういう現状を見直す一つのモノサシとして、我が社のメッセージは「〜できる」になっていないか…と自社を見つめ直してみては如何でしょうか?

 

売れるメッセージは「〜なる」です。

顧客の未来を保証した力強いメッセージは、御社を市場の救世主と見なしてくれるようになります。

 

救世主は、価格競争とは無縁です。

救世主は、ゴマスリ営業とは無縁です。

救世主は、ご用聞き営業とも無縁となります。

 

救世主というポジションは、嫌みのない誇り高き営業スタイルへと導いてくれるようになります。

結果、伸び続ける企業となるのは間違いのない事実です。

 

2015年の営業スタイル。

御社も市場の救世主的ポジションを確立したいとは、思いませんか?