とことん「本質追求」コラム第137話 売れる企業メッセージのつくり方

 

明けましておめでとうございます。
2015年、最初のコラムをお届けます。

 

本年は、未年ですが、私はこの「未」という文字にひどく興奮します。

 

東洋学者であり漢字学の第一人者である白川静先生の「字統」をひも解くと、未という文字は、「木の枝葉の茂りゆく形」とされています。

木の上に漢数字の「一」を乗せた象形であり、枝葉の先が長く伸びている様子を現しているとのこと。

 

今年は、多くの人にとって勢いのある成長著しい一年になるのではないでしょうか。

と、別にここで興奮しているわけではありません。

 

この漢字の使われかたが好きなのです。

 

「未」は、「未だ」というように時の関係に用いる場合が多く、「未来」「未見」「未聞」「未定」「未明」などの連語があります。

 

好奇心旺盛な私にとって、未知なる世界は最も興味が惹かれるところがあり、一度「?」が脳みそ内に浮かび上がると探求せざる得なくなる性分です。

 

そして、社会に出る前から、ずっと懲りもせずに色んな角度から探求しているテーマが「人間心理」であります。

 

心理学を中心に、脳科学や動物行動学、神経生理学など、聞きかじり程度ですが読みあさった本は数知れず。

 

今になって、その断片的な知識が化学結合するがごとく、購買心理に集約されていくような感じがしているのですが…

 

その中の知的生産活動の一つの成果(?)として、欲求の捉え方は2つに大別され、これを意識して営業活動をすることで「成果」があがりやすくなる…という仮説を持っています。

 

その仮説も、自分自身の営業やマーケティング上で成果を得た結果やクライアントさんとの共創プロジェクトの成功事例を振り返ると、もはや仮説の域を通り越して自信をもってお伝えできる範囲まで昇華しているようにさえ感じます。

 

これは、企業として発信するメッセージ「営業活動」「販売促進活動」のすべてのチェックポイントに、私自身がコンサルティング現場に利用しているもので、意識してメッセージを吟味すれば、誰でも売れる確度は格段に向上するはずです。

 

そもそも、営業活動とは…顧客に自社の商品をアピールし、注意喚起を呼び起こし、興味を惹き付け、欲求を浮き彫りにしていき、この商品を買う必要性を充分に認識してもらったうえで、顧客の背中を押す…。

このように購買心理プロセスにキレイに沿ったカタチでの「セールス活動」が実践できれば、高い確率で成約に結びつきます。

 

結果を出すマーケッターや営業マンは、「顧客は、何故この商品を必要するのか…」「購入する本当の動機はなにか…」など、購入する必要性を鋭く洞察し、その終点から逆算した上で、どのように「注意を呼び起こすか」「どのように興味を惹き付けていくか」「どのように欲求を刺激していくか」を意識的、無意識的を問わず、自然に計算しながら、セールスを組み立てています。

 

ここまでは、結果を出す為には必要最低限のスキルになるのですが……

 

飛び抜けた結果を出せるか、出せないかは、実はこの逆算の起点にあるのだと仮説を持っていたわけです。

それが、必要性を感じる前の「欲求」の捉え方にあるのです。

 

冒頭に申し上げた通り、私は欲求を2つに大別して捉えています。

一つは「手段の欲求」

もうひとつは「目的の欲求」です。

 

例えば、分かりやすい例を用いると「食欲」があります。

「お腹が空いたから何かを食べたい」

これが純粋なる「食欲」になるのですが…

 

これは、時と場合によって「手段の欲求」になったり、「目的の欲求」になったりしていることに気づかされるハズです。

 

本当にお腹が空いていて、それを満たすだけの食事。

動物的な欲求であり、食事と言うより「エサ」や「獲物」に近いももを求めている場合は「目的の欲求」と捉えることが出来ます。

 

しかし、私達が食事をするとき、本当に空腹で仕方が無いから食べている…というケースは、さほど多くはありません。

 

食事の時間が来たから、食べなくては…と言った道徳的な考えから発生する「秩序欲」や誰かと一緒に食事をする場合は「親和欲」が「目的の欲求」となり、食事はそれを実現する「手段の欲求」に過ぎない…ケースもあります。

 

また、珍しい食べ物や高価であまり口に出来ないものが食べられるチャンスが

くると「獲得欲」が芽生えることがあります。

このケースでは「獲得欲」が目的の欲求となり、食欲は手段の欲求となります。

 

誰かと食事をするケースも同じように別の切り口で捉える必要があります。

豪勢な食事を誰かに招待するケースでは、「自己顕示欲」の場合もあれば、感謝やお礼に紐づく「達成欲」も、目的の欲求です。

 

このように捉えると、食事をしているのは、単なる手段であり、目的ではないことが分かります。
ストレスを発散するための「偽の食欲」であれば、食事という手段で欲求を充足するよりも、スポーツや娯楽などの代替案で「目的の欲求」を満たす事の方が健全だったりするわけです。

 

企業は、営業・マーケティングに関わらず全てのセールス活動において、この「目的の欲求」に焦点を当てることで「当社は何をすべきか…」が明確になり、ブレない戦略が組み立てられます。

 

外食産業向けに店員さんの呼び出しベルを製造・販売しているクライアントさんをお手伝いした際、「外食産業は、楽しい食事の場を提供すべきでは?」という啓蒙活動を行ったことがあります。

 

その目的は、その啓蒙活動を通じて同社商品の必要性を感じてもらうためだったのですが…
外食企業における市場の状態を調査してビックリ。

1997年に29兆円あった市場規模が、16年後の2013年で23兆円にも縮小。
片や、弁当や総菜などの中食市場は、4兆円から8兆円へと伸長していました。

 

「食欲」を満たすだけであれば、外食よりも中食の方が気軽だし、リーズナブル。

 

大きな時代の流れを止めることは出来ません。

 

それでも、食に求める「目的の欲求」に焦点を合わせれば、まだまだデキることは山ほどあります。

 

美味しい料理の提供は、「手段の欲求」です。

その美味しい料理を食べたい…という「目的の欲求」は何か?

 

この追求こそが、売れるセールス・ポイントであり、企業の存在理由にも繋がっていきます。

業績のあがる企業メッセージは、この「目的の欲求」を軸として全てのセールス活動を全体最適させていくことにあります。

2015年からのセールス活動の起点は「目的の欲求」の探求からスタートしてみませんか?