とことん「本質追求」コラム第143話 商談の成立確度の向上に、リーダーは関与していますか?

「当社は業界NO.1です。御社を満足させる自信があります!」

先日、お手伝いしている企業で「SFA(営業支援システム)」の導入検討をしていたときのことです。

やはり、トップ企業の話は聞かなければ……と、シェアNO.1の企業にプレゼンしてもらいました。
同社は、シェア60%弱を獲得しており、2番手の10%台を大きく引き離すガリバー市場の頂点に位置している業界NO1企業です。

元気がよく、いかにもデキる営業マンが自信満々にセールスをしてきました。

私を含む聞き手全員を引き込むプレゼンは、冒頭からガンガンとハートに響く内容で「これでもか!」と商品の魅力をアピールしてきます。

私たちが望むことも、全て網羅されており、非の打ち所がありません。

「こんな事できますか?」「あんな事できますか?」という我々の質問に対しても、「可能です。こちらの画面をご覧ください…」と、すべて即答してきます。

パーフェクト!!

しかし、残念ながら同社のシステムは見送ることになりました。

プレゼンした営業マンも明快に「我が社は、競合の中でも最も高額です」と断言する通り、価格が高いのも一理ありましたが…

彼らが失注したポイントは、そこではありません。

素晴らしいプレゼンテーションで、心に響く内容だったのは事実ですが、残念ながら、商談相手(私たち)のハートを握ることは出来なかったのです。

原因は、私がいわゆる「劇場型セールス」と呼ぶ、一方的なプレゼンテーションにありました。

もし、彼が「劇場型セールス」だけで終わらずに、真の課題を発見し、解決策を提示する「コンサルティング型セールス」で締めくくっていたら、高額商品であっても売り込めた可能性は充分にあります。

少なくても受注確度をあげていくための「次回訪問」のチャンスは100%勝ち取れたハズです。

劇場型セールスは、相手を一瞬で惹き込む威力を持っているので、多くの営業マンが勘違いをしてしまいます。

「今日のプレゼンは最高だった。相手はうんうん頷いていたし“すごい“と連発していた。さすが、オレ!」と言った感じでしょうか。

聞き手(観客)を魅了する「脚本」を描き、営業マンやプレゼンテーターが、その脚本を魅力的に表現することは、とても重要です。

しかも、その「脚本」が、購買心理プロセスに沿っていれば、尚更受注確率はさらに高まります。

手前味噌ではありますが、シェアNO1のその企業は、藤冨が提唱している「波及営業」のシナリオそっくりそのままのプレゼン脚本でした。

関与はしていないので、もちろん“たまたま”だったのですが、プロジェクターに映し出された「導入先企業」は、まさに波及営業の概念図そのもの。

ピラミッドを3階層にわけ、一番上を大企業。二番目を中堅企業。三番目を中小零細企業で区切り、その右横に導入先企業のロゴマークが画面一杯に広がっています。

トヨタ自動車、郵政省、フォード、さらにはFacebookまでが顧客となっており、
波及営業を仕掛けられたときの顧客心理を一番理解している私でさえ「同調行動」を起こしてしまいそうになるほど、惹き込まれてしまいました。

トヨタはこの仕組み(SFA)をどのように活用しているのだろうか?
営業とは余り関係なさそうに見えるFacebookが何故「SFA」を導入している?

きっと、すごいノウハウが、このシステムに織り込まれているのだろう…
知りたい。でも契約しないと深くまでは知れない。うーん、欲しい……。

と、導入先企業に引きずり込まれるように、購買意欲が湧いてきてしまったのです。
ところが、劇場セールスだけで終わってしまったので、最終ピントがあわないままプレゼンが終了してしまいました。

商品の特徴や購入メリットは、充分に伝わりました。
しかし、他社の成功事例が殆どプレゼンされなかったので、実際に私たちが実現される姿もイメージできませんでした。
もちろん、仮に他社事例を歌ってくれたとしても、それは「自社の現実とはかけ離れたドラマ」だと認識されますから、この「劇場型セールス」だけでは、いずれにせよ不発に終わったでしょう。

特徴や購入メリット、そして他社事例だけでは、商談相手のハートを震わせることができても、握れることは出来ないのです。

だからこそ、自社商品が買い手に与えるインパクト(特徴や導入メリット)で、ハートを震わせることができたら、次は、買い手の現実とマッチングさせていくために、ハートを握る商談フローに移行させなくてはなりません。

では、ハートを握る商談フローのポイントは何かと言うと、「自社商品の特徴や利点」が「買い手のあるべき姿」の実現に繋がる…と認識してもらうことです。

そのための王道フローがあります。

具体的には、「特徴」や「購入メリット」を一旦引き出しにしまって、商談相手と膝を詰め合わせ…

1.いま置かれている「現状」を正しく理解し、
2.「課題や問題…」を浮き彫りにし、
3.その課題や問題がどのような「影響」を及ぼしているのか、を探求した上で…
4.的確な「解決策」をテーブルの上に並べる

という、4つのステップを意識して商談を組み立てていくことです。

プレゼンだけのロープレをしている企業が多数見受けられますが、プレゼン後の商談スキルまで「我が社の商談フロー」に組み込んで、教育訓練や日々のOJTに取り組んでいる企業は、まだまだ少数派です。

 

この商談フローの設計なくして、商談の成立確度の底上げ基盤は出来上がりません。
その基盤の上に、何度も、何度も繰り返し教育訓練できる仕組みがなければ、業績向上には繋がりません。

「現状」が、商談の成立確度が低い営業マンが多い…のであれば
「課題や問題」は、営業スキルの底上げや標準化…であり、
問題を放置したままの「影響」は、無駄な人件費の垂れ流しに繋がります。
そして、その解決策の一つが…「的確な商談フローの設計」になるのですが…

御社では、この「商談フローの設計」を営業マンと共有し、磨き上げる施策を取り入れていますでしょうか?
すくなくても……商談確度を向上させるための施策について、真剣に話し合ったことはありますでしょうか?

商談の成約率向上は、営業マンだけの責任ではありません。
組織としての課題です。
リーダーが、失注理由を営業マンだけのせいにするのではなく、設計と徹底の首を突っ込み、関与していくことで、営業組織全体の底上げに繋がっていきます。

御社では、リーダーが商談確度の向上に首を突っ込んでいますでしょうか?