とことん「本質追求」コラム第142話 販路を動かす企画・提案づくり

「そこまでウチが考える必要があるのでしょうか?」

 

先日、新しい販路開拓を進めるべく企画・提案書の作成をプロジェクトで進めていたときのことです。

 

特定販路に絞りこみ、ターゲット企業とのパイプも作り、いざ提案…というステージ。

 

ここからが成功と失敗の分かれ道に繋がる大きなターニングポイントでもあります。

こういったプレゼンは、想定できうることは全て織り込み、漏れなく企画を提案することで相手のハートをグッと握りこむことが大切です。

 

詰め将棋のごとく、二手、三手の先を読み、外堀を掘っていくことで、失敗のリスクを極限まで削っていかなければなりません。

 

こういった「思考の詰め作業」を怠るとロクなことは起きません。

何度も再提案しにいかなくてはならない手間が増えるだけではありません。
検討の時間が長くなればなるほど、暗礁に乗り上げる危険性は高まるばかりだからです。

 

これは営業の現場でも同じです。
検討期間が長くなると失注リスクは高まってきます。

 

従って、検討期間を短くするための「工夫」が必要になるのです。

 

そのような前提にたって、ミーティングを進めていました。

 

こちらが企画提案したときに、相手の頭脳に「?」が浮かびそうな事項を全てテーブルにあげて、回答策を先に提示していきます。

 

下手な営業マンは、反論処理に一生懸命になりますが、デキる営業マンは、反論処理を未然に防止するよう商談を組み立てます。

これと一緒です。

 

その中で、新しい販路にいる企業において、エンドユーザーからの集金方法がネックになることが想定されました。

いえ、想定ではなく「ターゲット企業とのパイプづくり」のタイミングで先方から具体的にでた不安です。

 

ここは、抑えるべき重要事項です。

 

どのように企画・提案すれば、相手の「?」が消えるのか……協議していると、頭の回転の早い社長さんは、ピンときた様子で知り合いに電話をするため、席を外しました。

 

その時にご担当の方がふとは疑問に思ったようなのです。

「決済方法は先方が考えることで、ウチが考える必要があるのでしょうか?」と。

 

確かに、その通りです。
彼の意見は間違っていません。

 

でも、仕事というのは「動かす」が目的であって、作業すること自体は目的ではありません。

 

9の作業をしても、プロジェクトが動かなければ、結果は0です。

しかし、10の作業をして、プロジェクトが動き出せば、結果は1になり、2になり、3になり…と昇華していきます。

この一手が足りないがために、プロジェクトが動かないことは、決して珍しいことではありません。

一手の手間を惜しむことは、自らの9の作業をディスカウントすることにも繋がるのです。

 

9の作業をしたのだから、私は仕事をした…。
これは最近の多くの若者に見られる傾向です。

 

でも、現実は違います。
結果の1を出せないということは、9の作業はマイナスなのです。
つまり、9という人件費を利益から吸収してしまっていると言う事なのです。

ここを徹底して意識することが大事です。

 

もちろん、全て考えうることを想定した上での失敗は、そこから芽が出なくても、他のところから芽が出るケースは往々にしてあります。

しかし、想定漏れの失敗からは、多くは学べません。
何が、失敗の真の理由か…突き詰めることが出来ないからです。

 

 

社長さんが席をたっている間、私は彼に言いました。

 

「人間は、分からないことがあると、途端に思考も行動も停止させます」
「●●さんもそうですよね? 私からの今日の宿題が中途半端だったのは、分からないことがあったからですよね?」と、言うとハッとしたようです。

 

「確かにそうです。ここを詰めておかないと相手は動きませんね」
と、ようやく理解ができたようです。

 

これは、B to Bビジネスをしている企業は、営業マンだけでなく全社員に徹底させたいテーマです。

 

・美容室向けにシャンプーなどの商材を販売してもらう化粧品メーカー。

・酒販店や小売店などにお酒を販売してもらう酒造メーカー。

・家電量販店に健康器具商材を販売してもらう医療機器メーカー。

 

直販の売上ではなく、販路を作って自社商品が流れ、売上が計上されるビジネスモデルの場合は、その販路の動き方ひとつで自社商品の売れ行きが左右されます。
営業マンが近視眼的になると、販路に自社商品を流した時点で「売上が計上された」と勘違いします。(経理上は、確かに売上計上されます)

 

その販路に置いただけで商品が勝手に売れてくれれば良いのですが……
現実はそこまで甘くはありません。

大手メーカーだって、コンビ二などに商品を並べてもらう条件として、億単位のテレビコマーシャルを仕掛けることを強いられています。

 

販路に商品を流した。
これは現実には、商品を販売するための布石を打ったに過ぎません。

 

現実的には、その販路にいる企業からエンドユーザーに売れた時点が、ビジネスロジック上の売上なのです。
企業は、経理上の数字ばかりで判断していると、時としてミスジャッジをします。
経理は、自社から見た現実しか現しません。

しかしビジネス上では、自社の手から離れた「販路→顧客」という世界観が上手く動いていなかったら、社会から存続は許されないのです。

 

だからこそ、メーカーは販路に対して商品を売る…という視点からワンランク上の視点にたつ必要があります。

 

そう、「販路が我が社の商品をより良くエンドユーザーに売るための仕掛けづくり」まで、一歩踏み込んだ企画提案をしていくことが大切なのです。

 

こうすれば、販路のやる気も芽生えるし、我が社の商品を実際に使用するエンドユーザーの心理も見えてきます。

 

このロジックを理解し、仕事に打ち込めば、どのような販促をすればより良く売れるのか…どのような商品改良をすればもっと売れるのか、どのような新商品を打ち出せば次なる飛躍のステージが築けるのか…。

 

企業としての持続的な成長基盤が出来上がっていきます。

 

御社では、事業成長のロジックを理解した上で、手間を惜しまず一歩踏み込んだ仕事をする体制づくりを意識していますでしょうか?