とことん「本質追求」コラム第141話 営業マンの底上げは実現できるのか?

「下位層」と「中間層」の営業マンの能力を引き上げたいのですが…

なにか良い手はありますでしょうか?

 

先日新しく始まったばかりのプロジェクトの決起大会で、社長さんからポロッと漏れたお悩み。

 

その悩みを解決するためにスタートしたプロジェクトですが、いつも脳裏から離れない悩みだからこそ、何度も、何度も同じところをループしてしまうのでしょう。

 

いろんな解決策があるでしょうが、私自身がお手伝いする「やり方」はただ一つ。

 

売上につながる属人的な要素を仕組化するだけの事です。

 

企業の方と、同行営業をして「商談を観察」させて頂くことは、プロジェクト開始時のお決まり毎ですが、好奇心旺盛な性格が邪魔をして黙って観察することは得意ではありません。

 

どうしてもその場でテストをしたくなってしまいます。

こう言ったら、こうなるだろう…。
この質問をしたら、真の課題が見えてくるだろう…。

そう思ったら、居ても立ってもいられなくなり、かなり気をつけていないとついつい商談に割り込んでことがあります。

先日も、ちょっと空気が悪い感じがしたので、割り込んで商談の風向きを変えてのですが、それを見た営業マンの方が「すごいですね!」と驚いていましが…
嬉しいというよりは、強い違和感を覚えました。

ちょうど、4年前くらいに「ある気づき」を得たときと全く同じ感覚です。

 

そのころ私は、営業マンの方を対象に「営業スキルの向上」や「モチベーションアップ」を目的に研修をしていました。

 

仕事自体は面白かったのですが、どうもしっくりと来ない出来事が続いていました。

 

営業研修をやり終えたその瞬間は、効果があったように見えても、もって半年。
1年後には、ほとんどが元通りに戻ってしまう姿が見て何かが違う…という違和感があったのです。

 

そう「ある気づき」とは、営業センスを身につけることは、極めて難しい……という現実に直面してしまったのです。

 

もちろん、不器用な人で一見営業センスがなくても、物凄い努力家でメキメキと実力を上げてくる人もいます。

数は少ないのですが、この目でしかと見てきたので、それは否定しません。

 

しかし、そんな人は営業センスがある人以上に希有な存在です。

 

努力し続けることも、ひとつの才能と言われる通り、努力家気質で営業の実力を上げて行く人は、極めて少数派です。

 

そもそも、そのような人は「営業研修」などやらなくても勝手に伸びていきます。自分で成長しようと必死に努力を続けるからです。

 

もちろん、営業研修をやった方が早く成長しますから、全くのムダとは言いません。しかし、構造的に捉えると、やってもやらなくても長い目で見れば変わりません。

 

では、大多数の営業マンはどうでしょう。
売れない現実が続くと大抵はこう考えます。

「私は営業に向いていないのでは…」

「商品が悪いから売れないんだ」

「今の時代、こんな営業スタイルでは無理だよ」

「こんな価格で売れって方が無理だよ」

などなど、ネガティブ思考が頭を支配しています。

 

このネガティブ思考の根源は、営業センスのなさです。

ドライな意見と思われるかも知れませんが、営業はセンスです。
センスが無ければ、売れるものも売れません。

 

反面、売れる営業マンはどうでしょう。
売れない現実が続いていても…

「どのような切り口で行けば、相手は欲しいと思うだろうか」

「売り先を変えたら、売れるかも知れない」

「どのように商談を運べば、安く見せることが出来るだろうか」

 

など、営業センスを光らせて、一つ一つ商談の場でテストしていきます。

 

そして、強いメンタリティーをもって、商談のイニシャイチブをとり、売れる糸口を探り続けるからこそ、売れるパターンがみい出せていくのです。

 

交渉の場において、商談のイニシャイチブをとる程の強いメンタリティーというは、幼少期から形成された性格につよく影響します。

後天的な教育では培うことは困難なのです。

 

性格を変えるには、自分という存在に嫌気がさし、自らが変わりたい…と強く願い、自助努力で変えていくしか道はありません。

 

外部からは、刺激は出来てもコントロールはできないのです。

 

だからこそ、人を変える…という視点は、この際一切捨ててしまった方が精神衛生上、よい選択肢になります。

 

では、どうすれば、人を変えずに「売れる仕組み」をつくるか。

 

言うは易く行うは難しなのですが、受注に至るまでの購買心理プロセスを掌握して、営業マンのトークでなくても、的確な情報をインプット出来る要素を営業プロセスの中に組み込んでいくしかありません。

 

受注に至る心理プロセスには、「商品への気づき」から「興味関心」が沸き、本当に買っても良いかという「不安」が芽生え、その不安を解消するためのトレードオフとなる「利益」を想起しながら、本当に買っても良いかどうか…を検討しています。

 

従って、標準的に底上げしようと発想したときには、この「気づき」「興味関心」「不安」「利益」の要素を営業マンが口で伝えなくても、キチンと伝わるツールを作り上げ、見込客との接点に置いておけば良いのです。

 

購買に対してニュートラルな人や後ろ向きな人に対して、前向きな商談をセットすることは、困難を極めます。

この難易性が「上位層」が入れ替わらない原因となっています。

 

しかし、購買に対して前のめりになった人との商談であれば、大抵の営業マンはストレスなく商談を運べます。

この環境づくりが実現できれば、成績の下位層の人は中位層に昇華し、中位層の人は上位層に昇華します。

これが仕組みづくりの面白さです。

 

難しい仕事のまま放置して、結果が出ていないのは、営業マンの責任ではありません。

マネージャーや経営者の責任です。

 

難しい仕事でも「どのような仕組み」を作れば、簡単になっていくのか…。

 

この緻密な分析と、解決のための仮説づくりが、営業マンの底上げには必要不可欠なのです。

胆力のいる仕事ですが、ここを避けている限り、結果がでにくい組織のままで甘んじることになります。

 

受注効率の悪い営業組織は、ムダな人件費を垂れ流していることになります。

 

本来、10名の営業マンで予算達成できるところ、受注効率が悪ければ12名、13名と営業マンが増えていきます。

一人頭、20万円だとしても、年間で500〜700万円もムダなコストが垂れ流している計算になります。

 

営業組織を底上げするためには、抜本的に考え方を改めないとなりません。

御社では、顧客の購買心理の分析を徹底して、売れる営業プロセスを作り上げることに積極的な取り組みを行っていますか?