とことん「本質追求」コラム第163話 ブルーオーシャンをつくり出せる企業の条件

「狙い通りでしたね! この市場はイケそうです。これからの展開が楽しみです」

 

追随を出来るだけ遅らせる為にムダに一般公開は避けますが、お手伝いをしている企業の新市場開拓に拍車が掛かっています。

 

ある業界に特化した営業政策で市場シェアを獲得してきた企業でしたが、為替市場の影響や国内企業の市場参入により、競争の激化が著しくなっていました。

 

そこで、同社は「この商品を他の市場で販売することはできないか?」と考えたわけです。いわゆるブルーオーシャンの創出です。

 

新しい売り先を考えるときは、まったく新しい販路を創造することも必要ですが、過去の販売実績を精査することも大切です。

・売上構成は低いけど利益率のよい売り先。
・自社商品の強みが充分に発揮できる売り先。

このような販売実績があるかどうか…売上台帳をひも解いてみるのです。

 

すると、同社ではビックリ仰天の取引実績がどんどん出て来たのです。

ある業界の世界シェアトップクラスの企業をはじめ、東証一部・二部上場の企業の名前が、次から次へと出てくるではありませんか。

 

ところが、それらの取引先における「真の購買理由」がわかりません。
商社経由で売買がされていたため、エンドユーザーとの繋がりが強固ではなかったからです。

 

利用シーンは想像できても、競合商品や代替商品を差し置いて、なぜ当社商品が使われているのか。

・何が一番の魅力なのか。
・どのような特徴が評価されているのか。

 

選ばれた理由が明確にわかりません。
理由がわかれなければ、営業における次の一手も考えられません。

 

商社に任せっぱなしでも、もちろん売上はたっています。

が、やはり「攻めの営業」を仕掛けないと、数字の計画が立てにくいですし、だれかの手の平の上で経営をせざるを得ません。

 

これは、自分の手の平を上でしか商売はしない…という同社社長のポリシーにも反します。

 

そこで、導入先に「お客様の声」をインタビューしたい…という口実のもと、真の購買理由を探りにいきました。

 

すると、取引先の口から、想定以上の評価が出て来たのです。

 

「これまで使っていた商品は、ランニングコストが莫大でした。

構造的には致し方のないことですが、そもそも構造を変えればランニングコストはなくなる…。

何かよい手は無いかと探していたら御社の商品を発見したのです。そこで取引のある商社に依頼し、御社の商品を導入しました。

この商品のお陰でランニングコストがゼロになるどころか、そのランニングコストで初期投資を賄えたほどの経済効果でした。」

 

と、真の購買理由と高い満足度の声が浮き彫りになったのです。

 

ただ、同時に課題も見えてきました。
商売の成り立ち方を見ると、商社任せの営業では「広がりにくい」ことが透けて見えてきたのです。

 

商社は儲らない仕事を自ら進んでやるほど、暇ではありません。

ランニングコストも取れない。初期投資も既存商品より安い。
そんな商品を積極的に販売推進するだろうか…。

よくよく考えると、商社にとっては、何の旨味もありません。
それどころか「必要悪」の存在にもなりえます。
見る確度を変えれば、コストメリットは、商社同士が受注獲得競争をする際の「武器」にはあり得るかも知れません。
が、売り方が消極的です。

 

コストが安いのは事実です。
しかし、それはあくまでも結果論。
商品そのものので、評価される売り方が望まれます。

となると、エンドユーザーから逆指名される「営業戦略」を立てる必要がある…。
1時間のインタビューで、これら全ての現実が明らかになりました。

強い潜在欲求のあるマーケット。
しかも、直接競合は、同マーケットは攻めにくいことも判明。
商品の機能的問題とアフターフォロー体制に圧倒的な差があったからです。

もう「積極的な攻め」以外に選択肢はありません。

 

そこで、同市場層にアプローチするため、企業データバンクからリストを購入。
ダイレクトメールを送付してみると、これまたビックリ。
通常の反応率より10倍近くもレスポンスがあったのです。
これで潜在欲求を顕在化させるキーワードにも確信が持てました。
あとは、勝負にうって出るだけです。

 

100万円近くの投資をして、産業展に出展。
失敗したらプロジェクトメンバー全員で割り勘だね…と冗談まじり、それでも強い覚悟をもって、緻密に、緻密に産業展での成功パターンを計算して取り組んだところ…。

 

これも見事に仮説があたり、大盛況をもって展示会の幕を閉じる事ができました。

 

クロージングはこれからですが購買意欲は高く、定価の概算ベースで来場者に伝えても「安いですね」と言われるほど。

 

これまでの市場は価格競争が熾烈なレッドオーシャンでしたが、新しい市場では、直接競合が気づいていないブルーオーシャン。

 

価格勝負ではない、商品そのものでの勝負であるため、高付加価値の営業スタイルがより確立しやすくなります。

 

多くの企業は「ブルーオーシャン」に憧れるかも知れません。
しかし、競争がない分すべては手探り状態で「成果」をあげなくてなりませんから大変さもあります。

小さな突破口を押し広げる「腕力」も必要です。
2年前のコラムでも、ブルーオーシャンは見つけるものではなく、つくり出すもの(詳細ウ→ http://j-ioc.com/column/685/)という記事を書きましたが、ブルーオーシャンをつくり出せる企業には、ある条件が備わっていなくてはなりません。

 

それは、イケルかも…と思った直感を信じて、やりきるチカラです。

プロジェクトメンバー全員が、成功に対して集中し、時間が掛かってでも妥協しないことです。

 

今回、私が関与させて頂いたプロジェクトの皆さんは、何一つ妥協していませんでした。

ブース設計。ファサードのコピー。ポスター。展示物。展示物の見せ方。動画の作りこみ。そして展示会自体に呼び込む仕掛けづくり。

 

展示会が始まる前からご担当者の方が話をしていましたが、ここまでやれば悔いはないですね。あとはフタが空けられるまで楽しみにまっていましょう…というところまでやりきっていました。

 

やりきるチカラを出す為には、やりきるチカラが醸成される環境をつくりだすことが必要です。

・失敗を許容し、同じ鐡を踏ませないサポート体制。

・時間や人間関係ではなく成果に焦点をあてる環境づくり。

・思い切った権限委譲。

 

これらが、社員のやりきるチカラをつくり出していきます。

 

ブルーオーシャンは、見つけるものではなく、つくり出すもの。
改めて実感しました。
御社でも、既存商品をブルーオーシャンで売り出す戦略を立ててみませんか?

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