とことん「本質追求」コラム第173話 新規開拓に必要な道具を、営業部隊で共有できていますか?

「うちの営業は新規開拓が弱くて…ちょっと見てもらえますか?」

 

ここ最近、急激に増えている「新規開拓」の文化をいかに定着させていくか…というご相談。

 

その対応策は、「新市場開拓」か「新商品販売」か、はたまた取扱商品や対象市場によって様々ではありますが、抑えておきたい1つの共通点は存在します。

 

それは「なぜ、私がその商品を売っているのか?」と言う大義名分です。

 

大義名分とは「行動の理由づけとなるはっきりとした根拠(広辞苑)」です。

営業目線で言えば「当社が、この商品を取り扱う明確なる理由」になります。

 

テレアポ・飛び込みなどのプッシュ戦略で、これを現場に落とし込んでみると、一目瞭然です。

大義名分がない場合は、相手は怪訝な顔つきを崩さず、ガードを固めたまま営業マンを追い払おうと必死になります。

逆に、大義名分を掲げながら、私が御社(あなた)にコンタクトしている理由が、相手に伝わると、不思議なほど不信感が取り除かれ、聞く耳をもってくれるものなのです。

 

様々な商品でテストした実感なので、これは間違いありません。

充分条件にはなりえませんが、必要条件であり、これがないと始まらない…という位に営業の生産性向上に強い影響を与えます。

 

そもそも、営業マンが「儲るから売っている…」と認識していたら、お客様の目にはどう映るでしょうか?

 

「あなたのために、なぜ貴重な時間を割いて話を聞かなければならないのか」

「あなたのために、なぜ貴重なお金を払って商品を買わなければならないのか」

 

無意識レベルで拒否反応が起きてしまします。

 

思い込みとハートが強い営業マンなら、それでも懐に飛び込んで商品を売ってくるでしょう。

でも、大多数を占める営業マンは、どこかで自信が持てず、強い商談力をもって相手に対峙することはできません。

 

当社が、この商品を取り扱う明確なる理由が欠如しているために、「なぜ、私がお客様にオススメするのか…」が、分かっていないからです。

 

初対面では、営業マンよりも、商談相手の方が緊張しているのです。

なので、様々な否定的な心理が働き、その緊張感を解こうとします。

つまり、突然やってきた営業マンから、何とか無事に逃れたい…という衝動に駆られるのです。

 

 

これを営業マンは大きく勘違いしてしまいます。

「私が受け入れられていないのだ…」と。
だから、心が傷つき新規を嫌がるようになってしまうのです。
既存顧客は、受け入れてくれるし、話も聞いてくれます。

追加商談狙い、紹介商談狙い…と称して、受け入れてくる方ばかりに時間が割かれるようになってしまいます。

 

もちろん、営業効率的にいけば、それはそれで間違いではありません。

 

ただ、経営上では大きな問題を抱えることになってしまいます。

それは、自社を取り巻く環境変化に気づきにくい体質になるというリスクです。

 

 

ドラッカー氏が「ネクスト・ソサエティ」という著書でも述べていますが、

重要な環境変化は、非顧客の中で生まれています。

だからこそ、非顧客と接触して、当社の商品がどう受け入れられているのか…

を受信できる新規開拓が必要なのです。

 

ただ、前述の通り新規開拓は「私が受け入れられていない…」という勘違いが起きやすい仕事です。

 

これは重大な問題です。

人間には、食欲、性欲、睡眠欲など様々な欲求がありますが、その中でも極めて強い欲求が「承認欲求」です。

 

これが満たされないと、問題行動を起こしたり、鬱病になったりします。

 

しかし、現実を直視すると、別に貴方(営業マン)が受け入れられていないわけではありません。

これが真実の姿です。

 

そんな自意識過剰になる必要はないのです。

貴方(営業マン)が受け入れられないのではなく、貴方の入り込み方が受け入れられていないだけなのですから。

 

それなのに、何を勘違いしているのか…

セールス研修などでは、初対面が大事です! とマナー研修ようような笑顔やお辞儀の仕方を何回も繰り返すことをしています。

メラビアンの法則…を誤解したまま解釈して、言語情報はたかだか7%程度。 声のハリや美しさなどの聴覚情報や見た目などの視覚情報が、残り93%です。

営業は第一印象で決まるのです!!

と主張し、挨拶の練習をしたり、おじぎの練習をしたり、笑顔研修をやったりしています。

 

しかし、メラビアン博士本人が証言しているように、この法則は誤解されて伝わっているのです。

 

博士の実験は、「好意」「嫌悪」「中立」という単語を読み上げ、「言葉」「声」「表情」のどれが感情伝達の優位性があるか…というものです。

 

コミュニケーションにおいて、言葉の伝達力がたった7%しかないなんて、そんな馬鹿馬鹿しい現実があるわけがない!と博士本人が証言している通り、言葉の伝達力は感情伝達に強い影響を与えているのです。

 

セールスの現場にいけば、そんなものはスグに理解できます。

相手はそれぞれ違うし、感情も刻々と変化するので、「立証」とまではいかないにせよ、声、表情、服装が一緒でも、言葉を変えるだけでコンタクト成功率や成約率があがるのは、研究熱心な営業マンならだれでも経験しているのです。

 

つまり、セールスにおいては「言葉の中身」を磨き上げることが重要なのです。

 

これを営業マン任せにしているということは、工場生産において「好きな道具を使っていいよ」言っているのも同然です。

 

おかしいですよね。

ある目的を達成するのに最適な道具があるはずなのに、好きな道具を使って良い…というのは。

 

 

営業組織でいえば、心を開く道具、相手を説得する道具、契約に結びつける道具、それぞれ特徴的な違いがあり、使い分けが必要です。

 

新規開拓で、いかに営業マンのメンタルを維持しながら、新規開拓を続けていけるのか…は、心を開く道具が大切になります。

 

この心を開く道具のなかでも重要な位置づけをするのが、「大義名分」なのです。

 

これが営業マン毎に解釈されるのではなく、共通の道具として認識されていることが大切です。

 

 

拙著「営業を設計する技術」(かんき出)でも、「顧客がNOと言えない大義名分を身にまとう」ことの重要性をお話していますが、ここは決して見落としてはならない新規開拓セールスの必要条件なのですから。

 

御社の全営業マンは、「当社が、この商品を取り扱う明確なる理由」を共通言語(道具)として、語ることが出来ていますでしょうか?