とことん「本質追求」コラム第294話 未来顧客との対話

 

 

 

「藤冨さん、他のコンサルタントが波及営業をそのままパクって教えているみたいですよ。これがその人が教えていたクライアントのサイトです」

 

 

先日、コンサルタント仲間から無断で波及営業をそのまま教えているようだ…との連絡をもらいました。

 

サイトを拝見する限り、確かにその気配は感じますが、まぁ今回は目くじらを立てることなく見過ごすことにしました。

 

モノマネされれば、市場認知度は高まりますし、逆に本家本元がやりやすくなる部分も出てきます。

 

確かに、ちょっとは嫌な気持ちにもなりますし、元々が極小市場なので、市場認知度など気にする必要すらないのですが…

 

やはり、セオリーは大切にしたいものです。

 

もう20年以上前に聞いた話ですが、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の方から「うちは競合が出ると全力で叩き潰すんですよ。普段はセールなんかしませんが、競合が出たら近くに出店してセールを展開。撤退せざるを得ない状況に追い込むんです。

でも、ハンバーガー業界は違います。どんどん競合を受け入れる。だからあれだけの市場規模まで膨らんだんですよね」と言った話を聞いたのを鮮明に記憶しています。

 

昨今では、コンビニがフライドチキン事業に参入をし、KFCも2015年前後はかなり経常利益が削られたようです。

しかし、現在のKFCのIR(業績推移)をざっくり読む限り、今となっては業績への影響は軽微だったと判断して良さそうです。

そこから見れば、市場規模が膨らんだと読んで間違いないでしょう。

 

競合の存在は、自社の企業努力を促し、競合との戦いのなかで顧客への貢献範囲が広がり、結果として市場規模が膨らんでいきます。

 

ドラッカーの言う事業の目的が『顧客の創造』であるならば、競合の存在は必然的に事業の目的を正しく方向付けてくれると捉えることも出来ます。

 

そうした視点から、今回のモノマネコンサルタントを透かして、波及営業を振り返ってみると、やはり少なからずの気づきを得ることが出来ました。

 

営業は、「業界」や「市場の成熟度」「競争環境」、さらに言えば「自社のリソース」によっては、同じ営業という言葉では一言で括れないほどの違いがあります。

 

戦略や戦術だけでなく、成果をあげるために必要となる人材の質までも変わります。

 

ここを踏み違えると残念ながら骨折り損のくたびれ儲けとなります。

 

 

営業部隊を送り出しても、思うように売れず…

 

広告やDMに投資をしても反応が取れず…

 

ホームページにチカラを入れても1件の問い合わせすらない状況…

 

精神的に滅入るばかりか、キャッシュは壊れた蛇口からダダ漏れするように消えていく…。

 

商品が悪いのか。

売り方が悪いのか。

担当者が悪いのか。

 

皆目見当がつかなくなる状況に陥るのは、決して珍しいことではありません。

 

では、一体何がいけないのか?

 

大きく分けて2つのポイントがあります。

 

1つは、市場との対話ができていないことです。

繰り返しになりますが「業界」「市場の成熟度」「競争環境」によって、市場の性格が決定されます。

マーケティングや営業活動も大きな概念で捉えればコミュニケーションです。

相手の性格によってコミュニケーションの質が変わるように、営業活動でも市場の性格によってコミュニケーションの質が変わります。

ここをしっかりと見極めることが最重要テーマとなります。

 

特に新商品の場合は、市場から見たときに新参者と同じ位置づけのコミュニケーションの取り方をしなければなりません。

 

地方の集落に移住し、先住者達の仲間に入りたいとき、自分の特技などをペラペラと喋りまくるでしょうか?

普通はそうしないはずです。

 

その集落の文化や生活習慣、人間性などを理解した上で、自分がどうすれば溶け込めるかを考え、発言・行動をするはずです。

 

これを営業に置き換えれば、まずは市場の性格を理解した上で、どう市場に参入できるかを考え、マーケティング・営業活動を展開することが最重要テーマになることをご理解いただけると思います。

 

わかっているつもりでも、意外とこれができていない。

売ろう、売ろうという意識が強すぎて、市場から煙たがられてしまっているケースがよく見受けられます。

 

 

2つ目のポイントは、型やテクニックに意識が集中しているケースです。

 

これは藤冨自身も波及営業を広めようとした際に、陥った罠です。

型やテクニックに意識が行き過ぎると、当然ながら相手への観察力が鈍ります。

 

結婚式の挨拶などで、書いた原稿を読みながら話す人がいますが、そんな話し方で心が打たれることはほとんどありません。

 

そもそも、原稿を読むというのは、自分が失敗したくない、という保身の表れです。

相手への配慮がないから、心を動かすことなどできないのはある意味当然なのです。

 

 

マーケティングや営業活動も同じです。

意識を自社の商品や売り方に向けるのではなく、相手(市場)に向けることで、成果に結びつくのです。

 

逆に言うと、型やテクニックが自然とできるようになるまで経験を積み、本番では意識しないでも実力が発揮できるように準備を整える必要があるわけです。

 

経験を積む時間がないなら、外部リソースを活用してでも、市場との対話に意識を集中するべきです。

 

 

 

ポイントの1も2も、つまるところは「市場との対話」に行き着きます。

 

市場との対話は、未来顧客との対話です。

近い未来、顧客となりえる未来顧客との会話のイメージができないのに、縁が生まれるわけがありません。

 

 

優れた商品が売れないのは、本当に勿体無い。

社会的な損失でもあります。

 

この損失をなくすためにも、未来顧客との対話イメージをしっかりと掴んだ上で、事業活動を展開してほしい。

 

モノマネコンサルタントは、波及営業の型(ステップ)を真似ることはできていましたが、この肝心要の「対話の仕方」がズレていました。

 

御社では、市場・未来顧客との対話に意識を傾け、適切な市場コミュニケーションを取れていますでしょうか?