とことん「本質追求」コラム第346話 顧客の創造

 

 

 

『コンビニ(フランチャイジー)を経営している友人が廃業して、新たにコインランドリーを始めようとしています。どう思います?』

 

(ご本人が特定できないように業種は変えています)

 

先日、知り合いの経営者と雑談をしている時に、話題に上がったテーマ。

 

コインランドリー事業は、今流行りのビジネスでもあり、土地建物を活かすことが出来、立地と商圏、競争状態を吟味すれば悪い選択肢ではないと考えますが…

 

その点を掘り下げて伺おうとすると、なんと土地建物も売却してしまったとのこと。

 

賃貸&投下資本もそこそこ掛かり、なおかつ経験のない業種への参入など、とてもではありませんが、賛成できません。

 

それに“今流行りのビジネスだから!”と、飛びつくのは危険極まりない意思決定です。

 

流行に乗って勝ち逃げするなら、投下資本が低く、損益分岐点の低いビジネスであれば、まだ判ります。

ですが、上記のご友人経営者は、それすら無視しています。

 

しかも、本業だったコンビニからは逃げるように撤退しています。

  • 競争の激化の中で、しかも薄利多売。
  • バイトの激減。

それら課題を突破するための企画すら、独自で推し進められないFCビジネスですから、確かに、廃業したくなるのも分かります。

 

でも、それを選択したのも、ご自身です。

安直に考えてしまったツケが回ってきたのに、また同じ過ちを犯そうとしています。

 

誤解を恐れずにお話しするならば「FC」も「流行ビジネスのモノマネ」も同じ思考回路です。

他者の成功事例に単に乗っているだけなのですから。

 

そもそも論として、商売、経営は、ドラッカーの言う通りに「顧客の創造」が企業の目的であるはずです。

 

顧客の創造を平たく言うと、「まだ人々が得ていない“効用”を生み出し、モノやサービスの提供を通じて、顧客を満足させる」ことです。

 

同じコインランドリーを営むにも、顧客を創造する!という視点を持てば、まだまだ新しい事業企画は生み出せるはずです。

 

なぜ、自分の家に洗濯機があるのに、わざわざ外出までして、外で洗濯するのでしょうか?

なぜ、家なら無料なのに、お金を払ってまでコインランドリーに行くのでしょうか?

今、コインランドリーを利用している人たちは、今のコインランドリーにどんな不便や不満を持っているのでしょうか?

 

その答えをその友人経営者はお考えになっていますかね? と問うと、絶対に考えていないとのこと。

 

予感は的中しましたが、もし安直に流行りのビジネスだから、という理由だけで商売を始めるのなら、残るのは借金と後悔しかありません。

 

絶対に手を出すべきではありません。

 

もし、事業を再び起こそうとするのであれば、自らの得意分野でどのような客層にどのような効用を与えることができるのか? つまり「どのような顧客を創造できるのか、を真剣に熟考すべきです。

 

この熟考は、おそらく脳みそがウニになる程の苦痛を伴うことになるでしょう。

 

でも、顧客の創造という視点無くしては、企業は目的を果たしていないことになりますから、またもや市場から退場を突きつけられても文句は言えません。

 

同じ轍を踏まないためにも、避けては通れない「思考」になります。

 

 

これは本業の支えになるような第2、第3の柱となるようなビジネスを企てる場合も同じです。

 

モノマネやFC加盟の一番の問題点は、経営難に陥った時に、起死回生の一手が打ち出せないことです。

 

FCには制約があるので、自由な解決策を打ち出せないのは当然ですが、モノマネは、顧客が何を求めているのか、真剣に考え対策を打ち出す癖がないので、売上減などの問題が起きた時に、手をこまねくだけで終わってしまう場合がほとんどです。

 

だから、そうなる前に「顧客が何を求めて、どのような消費行動を起こしているのか?」を熟考する癖を作ることが大事なのです。

 

 

経営者であれば、ほとんどご経験済みだと思いますが、最初の企画で「スッ!」と成功するような事業なんてそうそうありません。

大抵は、試行錯誤の上に成長軌道に乗せてきたはずです。

 

この時の試行錯誤の本質は、「ターゲットの変更」「効用の再考」「効用の伝え方の変更」であったはず。

 

 

トドのつまり、「誰にどんな効用を競合よりも魅力的に提供するのか? 結果、どのような顧客満足をもたらすのか」に帰結しているのです。

 

営業・セールスでも、広告でも、非顧客を顧客に転換させていく活動のすべては、この本質がクリアにならない限り成功しません。

 

つまり、売上を上げ続ける起点は「顧客の満足(への期待)」なのです。

 

これは、個人事業であろうとも、組織であろうとも同じです。

製造業でもサービス業でも、小売業でも全て同じです。

 

何かしらへの期待・満足があって、お客様はお金を支払うわけですから、その「期待開発」「満足開発」には、全神経を注ぐべきではないでしょうか?

 

御社が新規事業に取り組まれる際、人々(法人)の期待・満足への開発に神経を研ぎ澄ませていますでしょうか?