とことん「本質追求」コラム第406話 中小企業の「低価格戦略」は、成功するのか?

 

 

 

「“ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた” 読みました。このまま高価格路線でいくことで踏ん切りがつきました。」

 

先週のコラム「第405話 高いから売れない? の真偽を追求する方法」の中で、ご紹介したジェフ・ベゾス氏の金言に心が突き動かされ、早速「Amazon」で同書を購入し1日で読破されたそうです。

 

 

価格に対する経営者としての「姿勢」を提言する際に紹介したフレーズ…

 

「とにかく働いて働いて、その分の高いマージン料を消費者に納得してもらうやり方」をしている企業。

「とにかく働いて働いて、できるだけ低マージンで提供できるものをつくるというやり方」をしている企業。

 

この2つの差を知りたく熟読されたとのこと。

 

ブレずにビジョンを遂行する際に、とても参考になる話ですので、ぜひ皆様にもご紹介したいと思います。

 

同書では、「とにかく働いて働いて、その分の高いマージン料を消費者に納得してもらうやり方」は、アップルのスティーブン・ジョブズ氏のやり方であること。

そして、後者は、自身(ベゾス氏)のやり方であることを紹介し、こう続けています。

 

「私たちは小さい顧客ベースに対して高マージンで提供するよりも、大きな顧客ベースに低マージンで提供したいのです。」

プレミアムな製品を作って、プレミアムな価格をつける企業は多いが、プレミアムな製品を作って安い価格で提供したいという企業はほとんどない…とAmazonの姿勢を明確にしています。

 

 

確かに、Amazonの姿勢は理想的です。

しかし、前提条件を踏み間違えると、間違った「戦略」を採用し兼ねません。

 

理想を追うことが、誰にとっても最良の道だとは限らないのは、周知の通りです。

 

Amazonは、「プレミアムな製品を作って安い価格で提供するための顧客ベース」をそれこそ死に物狂いで作ってきました。

 

創業から7年間、累積赤字は1兆円を超え、投資家からブーイングの嵐を食らっても、決して怯まずに「最高の顧客体験」を作るために、果敢に先行投資を行なってきたベゾス氏の胆力は、想像を絶します。

 

物流網の整備と送料無料は、その先行投資の代表例。

 

世界NO.1の小売業者を目指し、顧客ベースを最大化することに執念を燃やしていなければ、到底出来ないことです。

 

マーケティングの世界には「LTV(Life Time Value)顧客生涯価値」という概念があります。

顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益のことです。

 

「最高の顧客体験」を通じて、LTVを引き上げる…

 

言葉にするのは簡単ですが、見えない未来を切り開きながら、信念を持って莫大な累損を抱えながら事業推進するのは「知力」「体力」「精神力」の三拍子が揃っていないとなせない技です。

 

 

Amazon日本のライバル企業は今頃になって、送料無料を掲げようとしていますが、正直言って後の祭り。

送料無料はあくまでも表面的なことであって、Amazonユーザーが最も利便性を感じているのは「送料無料」だけではありません。

自社の物流網を整備しているが故の迅速配達、明確な配達日保証。

買い物しやすいユーザーインターフェイス。

贈り物にも便利な配送台帳。

などなど、日本のライバル企業では決して真似ができないであろう企業努力によって顧客から支持をされています。

「配送無料」など表面だけを真似すると、売上を上げるつもりが横ばいで推移し、コストばかりがかかって、自分の首を絞め兼ねません。

 

日本のライバル会社を揶揄するかのように、同書でベゾス氏も指摘しています。

「私たちが注意を払う相手は顧客であって、競争相手ではありません」と。

 

話を戻しますが、大きな顧客ベース基盤を作る思想は、長期戦を戦えるだけの膨大な投資と胆力が必要です。

 

「とにかく働いて働いて、できるだけ低マージンで提供できるものをつくるというやり方」の前提条件が、大きな顧客ベースである以上、その大きな顧客ベースを作る覚悟なしに、低マージンの設定(低価格戦略)を目指すのは、低利益体質の企業運営をわざわざ目指すようなものです。

 

ロジックで考えればアタリマエのことですが、感情で考えるとなぜか逆のことをしてしまいがち…。

 

つまり、結論的には、投資額を絞って小さな顧客ベースで商売をしようと思うのなら「高マージン」を目指す必要があるわけです。

高マージンでも、お客様が喜んでくれるように商品、サービスの価値向上を目指せば、お客様はついてきてくれるものです。

 

「とにかく働いて、働いて、その分の高いマージン料を消費者に納得してもらうやり方」とは何か?

 

  • 高いマージンを喜んで払ってくれるターゲットは誰か?
  • どのようなベネフィット(便益)なら、そのターゲットは喉から手が出るほど欲しがるのか?
  • ベネフィットを伝える時、どんな場所で、どんな時にプレゼンテーションをすれば、聞く耳を持ってくれるのか?
  • そのベネフィットを、現在の買い手はどんな形で満たしているのか?
  • 自社よりもより良くベネフィットを提供している商品、サービスは他に存在しないのか?
  • 私がベネフィットを説明した時に、買い手は信用してくれるのか? 信用してくれないとしたら、どうやったら信用してくれるのか?
  • 購入意思決定時に「購入を躊躇」するボトルネックは何か? どうやったらボトルネックを解消できるのか?

 

 

 

それこそ死ぬほど考えまくって、想定見込み客に聞きまくって、高マージンを納得してくれるお客様、購入動機、満足ポイント、購買時の不安解消…

を明らかにし続ける努力が大切です。

 

これが、本当の意味での「働く」ということではないでしょうか?

 

御社は、「とにかく働いて、働いて、その分の高いマージン料を消費者に納得してもらうやり方」を考え抜く習慣を日常の事業活動に組み込んでいらっしゃいますでしょうか?