とことん「本質追求」コラム第18話 差別化は商品だけじゃない、売り方にも差別化を!

先日、建材メーカーの社長と話をしたとき、改めて競合会社に圧勝するような「差別化」を考えるのは、クリエイティブな作業だな・・・と感じました。

と言うのも、その業界は卸売業がバタバタと倒れ、直販体制を築くか、新たなチャネルを開拓することが急務なのですが、「素材(木)」しか扱っていないので、どの競合企業の商品ともセールスポイントに大差がないのです。

差別化が出来ないのなら、ドブ板営業でもして体力勝負を仕掛けるしかありませんが、三代目経営者で気が弱くゴリゴリ行くタイプでもない。

やはり残された道は「知力」で勝負するほかありません。

幸いにも三代目は頭が良く、人と違った視点でモノをみるタイプだったので、とあるアイディアで進むべく道が明確になりましたが、つくづく難問に立ち向かう時の「姿勢」の大切さを学びました。

20代前半の頃、私はある言葉に出会いとても感銘を受けました。
有名な言葉なので皆さんもご存知かと思います。

小説家である井上ひさしさんの言葉で

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに書くこと」という名言です。

難解なテーマに差し掛かったとき、いかに単純化して考えるか。

そして、単純化されたテーマをいかに掘り下げて本質を探り当てるか・・・

さらに、その本質に愉快な発想を取り入れて、興奮するほど面白いアイディアに変換できるか。

商品企画や販売戦略を企てる際、このロジックから生まれたアイディアは確かに成功確率が高いなー。と改めて思った次第です。

昨日、築地で打ち合わせを終え、顧問先へと移動しているとき、銀座の交差点で面白い光景を目にしました。

大きな水槽にキレイな魚たちが気持ちよさそうに泳いでいたのです。

「しかし何でこんな所に水槽が? しかも家電メーカーが・・・」
家電メーカー水槽写真

と不思議に思っていた矢先、先導するお兄さんが子供たちを数名引き連れて「みんな、好きなように撮っていいよ・ キレイに撮れるかな~」と誘導しています。

お母さんも自分たちの子供の姿をみて楽しそう。

フェイスブックかブログにアップするのか・・・写真を撮っている子供の後ろ姿を携帯カメラで撮影しています。

「あっ!」この時に、瞬間的にわかりました。

「これ、すごくユニークな売り方だなー」と。

時間がなかったのでヒアリングは出来ていませんが、おそらく水槽に来る前にカメラの使い方のレクチャーを受けているでしょう。

そして、実際にとってみると、凄くキレイに撮れる。

「お母さん見てみて~」 

間違いなく、この流れになるでしょう(笑)

購買動機がここで目覚めないはずがありません。

私が販売員なら「今の時代は学校の勉強だけできてもダメですよね・・・感性を磨かないと・・・」と匂わせて、購買意欲をさらに刺激するでしょう(笑)

しかし、この売り方はユニークなだけでなく、とても理にかなっています。

というのも、私も5年目位に高額なカメラと望遠レンズなどを買い揃えたことがあるのですが、まぁマニュアルを読んでもイマイチわからないわけです。

最初の頃は説明書を読みながら、一生懸命使いこなそうと努力したのですが、途中から面倒になって、いまでは「オート撮影」しか使いません(苦笑)

でも、仮にですよ。

電気屋さんで、カメラでも買おうかなーとウィンドウショッピングしていたら、POPか何かで”購入前に体験しよう!”みたいな企画があったら、私なら間違いなく飛びきます。

旅行+撮影テクニックを教えてくれるなんて、面白いじゃないですか。

で、実際に参加して、レンタルのカメラでその使い方教わって、うまく撮れたとしたら・・・間違いなくその場で買ってしまいます。

それが、毎週第2日曜日毎回開催!という企画でユーザーも参加OKだったら、上達したいがために、友人まで誘って通い詰めるかも知れません。

販売に対する大きな壁は「期待した事が本当に実現できるか?」です。

だからこそ、テスト導入や試作品提供が大きな力を発揮しますし、他社の導入成功事例が販売の後押しをするのです。

いかに、利用させる環境を用意するか。

いえ、もっと言うとその利用体験で見込客をいかに病みつきにさせることが出来るか・・・この販売プロセスが実現できれば、最強です。

販売戦略を立案するときの「一つの材料」として、ぜひ抑えておきたいポイントです。