とことん「本質追求」コラム第20話 売れる提案は「知覚」に”焦点”を当てている

昨日は20年前に勤めていたマーケティングコンサルタント会社の「学びの会」に参加してきました。 

とは言っても、今回は普段のテーマ(マーケティング分野)ではなく『ボクシングの魅力を発見する』というもの。

ライト級日本チャンピオンの加藤善孝選手と同社の代表である松本先生が、たまたま飲み屋で知り合って企画されたそうです。

この加藤選手は、ボクシング業界では、かなり稀有な存在として知られています。

ボクシングは収入が少ないので、他に仕事をしながら練習を続けるのが一般的ですが、彼はボクシング専業というのが、その理由です。 

「僕は世界を狙っています!」と言うボクサーは多いですが、「専業」でやっていると聞くと、本気度の高さを感じ、その実現の可能性をグッと現実的にしてくれます。

「僕は世界を取るために、毎日5時間練習しています」というボクサーより、 「僕は世界を取るために仕事をやめて、毎日5時間練習しています」 というボクサーの方が、可能性を感じますよね? 

ココに今日のテーマである「知覚」の大切さが横たわっています。

気持ちや事実を、「どう知覚させるか」。
これが販売やマーケティングでも、重要なのです。 

私自身、コンサルティング現場や研修などで、よく指摘させて頂く最重要テーマでもあるのですが、現場にどっぷり浸かっていると、どんな言葉が顧客に響くのか・・・

が意識できなくなってケースが多いものです。 

外野から見ていると「それ、顧客には伝わっていませんよ・・・」と突っ込みたくなる言葉が平気で顧客向けの提案書などに書かれていたりします。

普段の生活を振り返ってみても、皆さんも同じことを感じるのではないでしょうか?

家電量販店に行くと「電気代が年間●●円安くなります」と平気で書かれていますが、私は、あのメッセージをマトモに受けたことは一度もありません。 

基本的に売り手の言葉は、見込客は信用しないと思ってください。 

いえ、そう認識していた方が「どうすれば顧客が自社の”ウリ”を理解してくれるだろうか・・・」と真剣に考えるので、自然と「売れる提案」へとブラッシュアップされていきます。

例えば、先日、出会った日産の電気自動車「LEAF」も、考え抜かれた販売戦略の一つです。

日産リーフ

電気自動車の購入メリットの一つに「燃料代の経済性」が挙げられます。 

実際、ガソリン車と比較すると、1台満タンにする費用は「6分の1」で済むそうです。 

でも、皆さん、よく考えて欲しいのです。

この「燃料費の経済性」が、私たちの生活に好影響を与えるか・・・理解・納得できますか? 

おそらく「うーん、ホントかなー」とか「えーコスト計算すると割に合うのかなー」とか色々な疑問が頭の中を駆け巡ると思います。 

そう、燃料費が6分の1というのは「売り手が考え出した言葉」なので、見込客の心にはリーチしにくいのです。 

この「売り手の言葉」を顧客目線で「知覚できる情報に変換」したのが日産のスゴイところです。

どうやったか・・・ これはロンドンで実施した販売戦略ですが、電気自動車のタクシーを導入させて、タクシー料金を6分の1にしたそうです。 

これなら、誰でも「6分の1の現実を知覚」できます。 

「えっ?!なんでこんなにタクシー代が安いの? 電気自動車だから? へースゴイ経済的なんだね、電気自動車って! しかも、静かで快適だし、環境にもイイのか・・・これ結構イイかも・・・」 実際に乗車した人は、経済性を一瞬で「知覚」でき、生活に取り入れた時のメリットが具体性を帯びてきます。 

ここまで来れば、購買行動まであと一歩。 というわけです。 

このように売れる提案にするためには、「知覚」させることに焦点を合わせることが大切です。

TVCMをガンガン流すより、タクシー会社と連携したプロモーションを展開した方がコスト的にも販促効果的にも圧倒的に有利なのは、人間心理から見れば一目瞭然!!

金を出すより、知恵を出せ! 

成熟マーケットでは「売り方の差別化」が企業の成長のカギを握っている・・・日産の販売戦略を見て「間違いない・・・」と気づかされた良い事例でした。

 

 

以上