とことん「本質追求」コラム第440話 考える社員が生まれ育つ「環境」とは

 

 

「考える習慣が身につくような社内環境づくりは、当社でもぜひ取り入れてみたいです。お手伝いしてもらえますでしょうか?」

 

先週のメルマガにはたくさんの反響を頂きました。

 

「具体的な成果に繋げるための問いは、とても参考になりました。早速手帳に書き留めてありますよ」

「社員研修は薄々無駄かなーって思っていましたが、これで踏ん切りがつきました」

「社員がまさに思考停止になっていて悩んでいたので、目の前が明るくなった気分になりました」

 

など、お会いした方からメールでの感想まで嬉しい声を頂いたのですが…

 

現実的な悩みとして…

 

「社員に考える習慣がついてくれるのは理想ですが、ほんと出来ますかね?」

「どうすれば出来ますかね?」

 

という実務レベルに落とした時の戸惑いも多く聞かれました。

 

確かに「考える習慣」を組織全体で作り上げることは簡単なことではありません。

 

しかし、困難だからといって、手をつけなければ変わることは出来ません。

 

好景気で「寄らば大樹の陰」の恩恵にあずかろうとしている社員を雇う余裕がある会社であれば良いのですが…

荒波に揉まれる難局の時代を生きる企業は、一人一人のマンパワーを発揮する企業運営が求められることは間違いありません。

 

経営陣が会社の方針・戦略を考え抜き、優れた方向性を見出そうとも、現場で起きるさまざまな事象に的確な対応をし続けるためには、やはり現場での「考える力」が必要となるからです。

 

冒頭の「手伝って欲しい」とおっしゃられた社長は、それを重々承知はしているものの、この「考える」という曖昧な言葉が曲者なのだ…。

と言っていました。

これには強く同意しました。

他に適切な言葉が見つからないので、藤冨も安易に「考える習慣」とお伝えしていますが…

 

「考えているレベル・奥行き等のモノサシ」がない以上、誰だって「考えている」と自己評価してしまいます。

 

いくら上司が「もうちょっと考えて行動してくれ」「どうしてそうなる?どうやったら良いと思う?」と部下に言っても、そもそも上司と部下の「考えるモノサシのレベル」が違う以上、会話にすらなりません。

 

上司は「なぜ、考えられないんだ?」と悩んでいても、部下は「ちゃんと考えているのに」とずっと平行線のままだからです。

 

これが本質であるならば、改善策は明快です。

「モノサシのレベルを合わせる」だけです。

 

どうやって、モノサシのレベルを合わせれば良いのでしょうか?

そもそも論で考えると3ステップで進めるアプローチが導き出されます。

 

  1.   企業の目標と個人目標のベクトルを合わせる
  2.   個人目標と業務の関連性を強化していく
  3.   相談型マネジメントで考えるスキルを強化していく

 

この3ステップで進めることがスムーズかつ効果的です。

簡単に解説しましょう。

 

 

  1. 企業の目標と個人目標のベクトルを合わせる

 

企業の目的は「売上利益を稼ぐこと」ではなく「顧客を創造すること」であるという認識は、藤冨コラムの読者さんであれば、すでにご理解頂いていると思います。

 

「顧客を創造する仕事そのもの」は、経営陣がプロダクトアウトしていく必要がありますが、その顧客の創造に必要な情報源は、社内からも集める必要があります。

この時、経営陣と社員の「顧客を創造する」という意味がイコールに近ければ、社内からは良質な情報が経営陣の元に集まってきます。

さらに、その情報をベースにした意思決定であれば、社員も理解がしやすい。

つまり、構想が行動レベルに落とし込みやすい状況になるわけです。

 

「顧客を創造する」という概念は非常に重要であるにも関わらず解釈が難しく、なかなか経営陣と社員の「共通認識」を持つことが出来ません。

これをどれだけ噛み砕けるか?

それは、「顧客を創造する」という概念を明確な言語を使って業務に落とし込んだ企業目標をまずは作り込むことが大事です。

 

例えば、私も関与している「パレスチナ自治区の刺繍」を販売している社長は、これまで「刺繍をした洋服やスカーフ」を販売していました。

ところが、このコロナ騒動を機に「パレスチナのオンライン体験旅行」の企画を打ち立てたのです。

15年以上もの間イスラエル軍に包囲され、巨大な監獄と呼ばれた国で、不自由な生活を暮らす中、人々は何に喜びを見出し、幸せを感じているのか。

コロナで不自由な生活を経験した今の日本人には、とても興味深い世界に映るはずです。

 

私たちの企業目標は「限られた自由の中で最大限の幸せを勝ち取ろうとしている人たちの力になりたい」と掲げれば、きっと多くの人々から歓迎されるはずです。

これも立派な「顧客の創造」です。

 

そして、自分なりの幸せを勝ち取りたい!と願い、努力することに生き甲斐を持つ人にとって、同社は自分の人生目標と会社の目標を重ね合わせることで「生き甲斐のある仕事に巡り会う」ことができるようになります。

 

どこまで「顧客を創造する」という企業にとっての重要な責務を「やりがいに繋がる世界観」と結びつけることができるか…その着想と表現力が「考える社員と共に働く、重要なモノサシの基礎」になっていくでしょう。

 

2. 個人目標と業務の関連性を強化していく

 

引き続き、上記を例にして2番も説明していきます。

 

会社の目標は「限られた自由の中で最大限の幸せを勝ち取ろうとしている人たちの力になりたい」と設定したとします。

単に「パレスチナのオンライン体験旅行」を作ることを目的とする場合、閉ざされた国の食事、生活、仕事などの紹介動画で止まる可能性が大です。

社長が、それを見て「こんなのつまんない、もっと考えて作れ!」と言っても、「面白い基準(モノサシ)」がなければ、社員は何を直せば良いのかわかりません。

 

しかし「限られた自由の中から幸せを見出す」とモノサシができれば、社員は考えやすい。

仮に社長にとって納得のいく動画に仕上がっていなくても「これを見て、あなた自身も幸せを勝ち取れた喜びとして共感できますか?」と深い質問を投げることが出来るようになります。

 

 

社員と目標を共有し達成しようと思うのなら、何をやれば良いのか?出来るだけ明確にイメージが出来るように、する業務との関連性を明確にしていく必要があります。

 

最後に、

3. 相談型マネジメントで考えるスキルを強化していく

 

ですが、経常利益率が驚異の50%以上のキーエンス社は、営業マンが帰ってきた際に訪問した顧客、顧客の置かれた状況、課題や問題、そしてそれを解決した際のパフォーマンス等を報告させ、あたかも同行営業をした後の反省会のように詳細にヒアリングそして改善提案をしていくそうです。

 

営業力強化マネジメントは、他にもノウハウがたくさんあると思いますが、彼らが驚異の販売力を誇る原点は、この相談型マネジメントにあると藤冨は確信しています。

 

目標を共有し、目標を達成するための道標があり、それを計測するモノサシがある。

そして、達成するために何をすれば良いのか、逐次相談し軌道修正できる「場所」がある。

 

この枠組みがあって、初めて自社の目標を達成するために何をなすべきかを共有できる「考える社員」と一緒に働けるのではないでしょうか。

 

考える社員を求める前に、まずどうすれば考える社員が生まれ育ち、一緒に働き続けられるのか。

それを考えるのが経営者の務めであるはずです。

 

御社には、考える社員が生まれ育つ環境整備に力を注いでいますでしょうか?