とことん「本質追求」コラム第155話 営業マンが成長する「セールス・マニュアル」のつくり方

「営業組織を高位水準の金太郎飴にしたいのだが…果たしてどう教育すれば良いか?」

 

ここ最近、複数社のクライアントさんから尋ねられているテーマでして、こうも同時複数的にご相談を頂く事実を鑑みると、何か時代背景があるのでは…と感じる今日この頃です。

 

2対8の法則や、2対6対2の法則に代表されるように、売れる営業マンと売れない営業マンの構成比というのは、今も昔もあまり変わりません。

 

しかし、これが問題認識として浮上するのは、市場が成熟化していることが背景であること容易に想像がつきます。

 

つまり限られた市場の中でパイを食い合うので、そもそもの分母が減っているのが、根本的な問題点なのです。

 

自分以外の人間がほとんどいない孤島であれば、ボーッとした人間でも食べ物にありつけます。

木の実は、食べ頃まで放っておいても、食べたいときに食べたい分だけ取れば良いですし、岩場にいる貝も、荒らされることがないので、いつでも採取できます。

しかし、人口が増え競争が激しくなれば、人より知恵を絞り、人よりスピーディーに行動しなければ、食べ物にはありつけません。

 

営業マンも一緒です。

人より知恵があり、人よりもスピーディーに動ける人間が、売れているのです。

タイミングを逃すことなく、勝機あるときには全神経を集中させているからこそ、受注を獲得できるのですが…

 

これを2対8の「8の人」に単純にやれ!と言っても、成果は出ません。

 

知恵がないのですから、「知恵」を授けなくてはいけませんし、スピーディーに神経を集中させて活動したくなる「動機づけ」が必要です。

 

「動機づけ」は、個人の成長欲求が高ければ自発的に動きますが、今の時代それを求めても期待外れに終わります。

金や地位だけでなく、自己成長を求めて、ガツガツと営業できる人種が減ったいま、動機づけの対象は「承認欲求」がキモを握ります。

つまり、評価制度が「動機づけ」のカギを握るようになるのです。

 

「知恵」…つまり「スキル」については、教育制度やマニュアルがキーになり、これも評価制度とセットで動かすことがキモとなります。

予算達成という「結果」と「評価」を連動させると、強者だけが強者で居続けることになりますが、「結果につながる態度や行動」と「評価」を連動させると、2対8の「8の人」(現実には、2対6対2の「6の人」)が上位に踊りでる機会が生まれます。

 

長年トップ層に君臨されていた人も新しい刺激をうけ、ピラミッドを引っ張り上げる力学が働き「高位水準の金太郎飴」が出来上がることも夢ではありません。
が、このテーマは「言うは易く行うは難し」です。

 

とくに「営業マニュアル」に至っては、様々な業種の営業組織に関わるなかにおいても、「これは凄い!」と唸ったことは残念ながらありません。

 

もちろん、競争がゆるい時代の「昔のマニュアル」に唸ったことは幾度となくあります。

しかし、競争激化時代の「今のマニュアル」は、カタチが変わってしかるべきなのです。

 

もちろん、マニュアルで飛躍的な成果が出るとは思っていませんし、万能だとも思っていません。

個人的には、iPhoneにマニュアルがないように、何も習わなくても直感的に動くだけで成果が出るような「戦略策定」を完成させることが大切だと思います。

 

しかし、組織力の向上という視点では、「承認欲求」に火をつけ、「自己成長」の喜びを感じる「場」をつくることも、同じように大切なことだと思っています。

社員に活力がみなぎれば、会社にも自然と活力がみなぎるもの。

だからこそ、「営業マンが成長するセールス・マニュアル」という視点は、これからの企業にとって、持続的に冨を生み出すひとつの資産になるはずだと考えているからです。
それでは、今の時代における「営業マンが成長するセールス・マニュアル」とは如何に作るべきでしょうか。

 

最も外してはならないのが、マニュアルのコンセプトです。

 

多くの企業のマニュアルを拝見して気がつくのは、「如何に売るか…」に視点が置かれていることです。

 

動機づけをしなくても、動ける上位層の営業マンであれば、これで充分です。
しかし、金や地位などの外的刺激で動機づけできない大多数の人は、「飛び抜けたい!」というよりも「社会の一員として平穏に暮らしたい」と願っているので、「売る」という視点には潜在的に嫌悪感を抱いています。

 

きっと「売るという視点」は、自分だけが「得」をしているように感じるからでしょう。

 

だからこそ、マニュアルのコンセプトは、「買う人」からの視点で描かれていなくてはなりません。

 

「我が社の商品が何故選択されたのか」
「選択した人が、どのような利益や驚きや喜びといった結果を享受しているのか」から逆算して描くのです。

 

成果に結びついた商談をストーリー立てて体系化することで、2対8の「8の人達」が、成長できるマニュアルに仕上げるのです。

 

「分かる」というのは、「分ける」こと。と教えてくれた人がいましたが、その通りです。

 

1.商談を掘り起こすステージ(出会いを作る)
①.テレアポ
②.飛込みセールス
③.ダイレクトメール
④.展示会フォロー
⑤.自主開催セミナー

 

2.商談ステージ
①.自社紹介
②.商品説明
③.テストクロージング
④.コスト提示
⑤.アップセル
⑥.クロージング

 

3.見込客フォロー
①.フォロータイミング
②.受注促進方法
③.次回面談の取り付け方法

 

4.受注後フォロー
①.社内営業
②.紹介商談の促し方
③.クロスセル

 

などなど、成果に結びつく行動を細かく分類して「売り手目線」ではなく、「営業マンが話した内容がどのように相手の感情に影響を与えているのか」という目線で「セールス・マニュアル」を体系立ててことが最大のポイントです。

 

つまり、顧客は何に恐怖を感じてセールスの壁を作ったり、何に期待をして、壁を取り払うのか。
そして、購入に至るまでの「心理的変遷(へんせん)」を浮き彫りにして、購入後はどのように満足しているのか…を理解するプロセスが組み込まれていることが大切なのです。

 

これを通じて、相手の感情を察してコミュニケーションをする重要性に気づかせ、人間的な成長に繋がることを徹底して伝えることで、「営業マンが成長するセールス・マニュアル」が完成されます。

 

御社の営業マニュアルは「今の時代に沿ったセールス・マニュアル」に更新されていますか?