とことん「本質追求」コラム第218話 高い新規開拓力をもたらす「波及営業」の限界?

 

 

「“導入先企業の実例紹介”が出来ない場合は、波及営業は、使えないのでしょうか?」

 

先週の水曜日、日本アイ・オー・シーで定期的に開催している「波及営業戦略の実践法セミナー」を実施した際、ご質問を頂きました内容。

 

たしかに、技術力を駆使した商品を提供している企業さんにとっては、よく出くわすことでして、とても歯がゆいテーマでもあります。

 

波及営業は、「あの会社(人)が購入しているのなら、優れた商品に違いない」という購買心理への働きかけがキモを握ります。

 

肝心の「導入実例」が紹介できなければ、波及営業は使えないのかも…。

たしかにそういった不安は感じるでしょう。

 

しかし、それは表面的な捉え方に過ぎません。

現に、顧客の実例紹介なしに、波及効果の高い新規開拓を成功させてきた実例を複数経験しています。

 

と言うのも、波及営業はホームページやDM、広告やメディアを使った「遠隔戦」と捉えられがちですが、それはあくまでも一手段に過ぎません。

「接近戦」でも充分に活用できます。

 

営業マンが、波及営業を意識さえすれば、名前を伏せて他の活用事例を伝えることで、充分に効果的な「第三者話法」が成立するからです。

 

非顧客を見込客化する集客プロセスにおいても、実例紹介なしで強力な反応率を叩き出すノウハウもありますから、この集客ノウハウと接近戦を組み合わせれば、波及営業は充分に成立します。

これは、既にクライアント企業さんとのプロジェクでも立証されています。

 

従って、「他社に教えたくないし、公表もされたくない…」と顧客に言われても諦める必要は皆無です。
 
逆にチャンスと捉えることすら出来ます。

 

極めて秘匿性の高いプロジェクトだったので、具体的な企業名や事業分野はオープンにできませんが、以前こんな経験をしました。

 

あるプロジェクトで顧客のインターフェイスに行ったときのことです。

 

インタビューを終え、実例記事を作り、ホームページやチラシ、営業ツール等で使おうと編集をしていたところ、インタビュー先から「あの取材内容はオープンにして欲しくない」という連絡が入りました。

 

購入する前の期待値。

購入する前の不安事項。

購入したあとの評価。

具体的な導入効果。

導入効果から派生させる企業利益やコスト低減ポイントなどなど…

 

インタビューにおいては、「拡販にあたって有利になる材料」を根掘り葉掘り聞き出していきました。

 

そして、非顧客が顧客になるまでの感情や心理プロセスを思い浮かべながら、欲求を引き出したり、購入に際する不安を払拭する「構成」を思い描いていくのですが…

 

これをすべて具体的に表現してしまうと、他社から簡単に模倣され、自社の競争力が一瞬にして奪われてしまうリスクが顕在化してしまったのです。

 

 

 

顧客との長期取引をする上でも、そして企業活動よりも前に人としての倫理観においても、この顧客企業の不安やリスクを無視するわけにはいきません。

 

しかし、元々は顧客企業の生産性を高める目的で作った商品です。

 

個別企業の企業秘密は守る必要がありますが、自社が問題解決したテーマは、自社のノウハウです。

 

決して、顧客企業のノウハウではありません。

 

そして、そこまで情報公開に対して不安になるということは、その業界自体の問題解決のキモがそこに確実に存在するというサインでもあるのです。

 

ここは、突き詰めて明確化していく必要があります。

 

顧客企業の利益を毀損しない範囲で、自社のセールスのおける効果的なアプローチを見いだすチャンスだからです。

 

とある企業では、社名は一切出さず… そして、具体的な名詞を一切ださずに、当社が提供した「顧客に貢献している技術のキモ」と「顧客が受け取ったベネフィット・利益・問題解決テーマ」を浮き彫りにして、顧客誘因のキーワードをホームページに散りばめていきました。

 

グーグルで検索されているキーワードを調べると、ここで浮き彫りになったキーワードに確かな需要を感じたからです。

 

実装してみると、仮説とおりの結果が現れ、受注確度の高い問い合わせ客が増えました。

その上、名前を伏せた「自社商品の活用例」を第三者話法で語れるようになった営業マンは、これまで以上の成約率を叩き出すスタイルを身につけ、業績を着実に上昇ベクトルへと持ち上げていかれたのです。

 

これは、たまたまあった一例ではなく、概念的には、複数のプロジェクトで経験してきた普遍性のたかい「拡販テクニック」です。

 

自社の顧客が「当社が導入したことを言わないで欲しい…」とか「お客様の声に載るのは、100%ムリです…」と行った場合は、彼らは他社に真似をされてほしくないケースが大半です。

 

つまり、自社商品が優れたパフォーマンスを出していて、高い問題解決能力が顕在化したことを意味しています。

 

その問題解決能力は普遍性があり、他社が採用すると他社も同じように問題が解決され、競争力がトントンになってしまう…
ここを顧客企業が恐れているとしたら、自社商品のポテンシャルは極めて高いと判断できるわけです。

 

御社では、顧客企業から「当社との取引は秘密にしてほしい」と言われた、そのひと言を鵜呑みにして、大きなビジネスチャンスを逃してはいませんでしょうか?