とことん「本質追求」コラム第394話 不安を理由に決断しないこと。

 

 

 

「以前、ご相談しようと思っていた新規事業ですが、断念することにしました。社員から“これ以上仕事を増やさないでほしい”と言われましてね。成功する確率もわからないし、今は既存事業に集中することにします」

 

 

以前、セミナーにご参加された方から、1年ぶりにメールが届きました。

スポットでご相談を受けた際は、

 

「既存の事業は商社経由で買い手の顔が見えない。セミナーを聞いて、その恐怖を痛感しました。まだアイディア段階ですが、こんな事業を考えていまして…」

 

と、意気揚々にお話をして頂いたのですが、その後音沙汰もなく1年後に頂いたメールのご報告でした。

 

会社が置かれた現状や人材、資金、時間などの余力資源など、総合的に勘案した結果でしょうから、外部の私が口を出すことではありません。

 

その旨を返信したところ、お電話を頂き、もう一度相談に乗ってほしいとのことでしたので、その場で解決しましょう!と急遽、電話相談にさせてもらいました。

 

嫌な予感が走ったためです。

 

何かのプロジェクトを絶対に成功させよう!と強く決断したら、求められるのは、企画力とプロジェクト推進力です。

 

企画は、イケる、イケないの判断を含めてお手伝いは出来ます。

プロジェクトの推進もフレームワークは当然ながらお手伝いします。
波及営業は、そのためのものですから。

 

しかし、社員を引っ張っていくのは、その組織のリーダーです。

 

ところが、今回のご相談では、「先生から社員を説得してくれませんかね?」というのが主旨だったのです。

 

残念ながら、その場でお断りました。

私が社員さんを説得できるわけがないからです。

 

 

  • 社員に嫌われたくない。
  • 新規事業は成功確率が見えないから自信を持って押し進められない。

 

こんな不安を理由に決断をしていたら、会社は衰退の一途を辿るだけです。

 

成功している企業、プロジェクトは、例外なくリーダーシップが発揮されて、力強いプロジェクト推進力を兼ね揃えています。

 

たまたまヒット商品に救われた会社も確かにあります。

しかし、その裏方を覗くと、例外なく産みの苦しみを味わいながら、成功を手繰り寄せています。

 

チョロっとアイディアを出して、サクっと成功して、それが持続している事業を私は関与したこともなければ、見聞きしたこともありません。

 

たまに謙遜したように『大したことなかったですよ』と言う社長もいますが、よくよく聞けば、社長や社員の皆さんも涼しい顔をしてやっているつもりでも、側から見れば、死ぬほど考え、変態的な行動力をこなしていたりするものです。

 

 

持続的な成功に必要なのは、センスと努力の両輪です。

 

成功が約束された新規事業なんて、そもそも無いのですから、ガムシャラになすべきことを行って不安をかき消すほかありません。

 

何度も言いますが、不安を理由にした決断で、良い結果を手繰り寄せることはないと覚悟した方が賢明です。

 

不安は、努力で打ち消すものです。

 

強烈なリーダーシップで、社員を説得するだけが、道ではありません。

 

外堀を掘って、丁寧に社員に理解してもらうことだって、立派なリーダーシップだと私は思います。

 

道半ばで社員に誤解されたり、斜に構えられたって、結果で見返せば良いだけです。

 

 

最も不安に感じなくてはいけないのは、変わらないことではないでしょうか。

 

企業は、30年寿命とよく言われます。

30年という数字が正しいか否かは別として、「商品にライフサイクル」があるのは現実で、ある商品にしがみついていたら、衰退の一途を辿るのは、ある種自然の摂理です。

 

  • コンビニ台頭の裏側で、牛乳箱が姿を消し…。
  • 携帯電話の台頭の裏側で、ポケットベルが姿を消し…。
  • スマホの台頭の裏側で、携帯電話(ガラケー)が姿を消しつつあります。

 

今後も益々進化するスマホやウェアラブル端末の台頭で、個人向けのパソコンが姿を消していくのは間違いありません。

 

 

商品には、寿命があります。

 

息が長いのか、短いのか、ただそれだけです。

代替商品が登場して、既存勢力を駆逐しています。

 

 

 

今年9月に執筆したコラム「第382話 生存者(生存社)の条件」でご紹介した「わけあって絶滅しました」を読むと、生物も商品も抽象概念で捉えると同じ理由で絶命していることが分かります。

 

 

マーケットを凝視せずに、既存商品にしがみついていると待つのは衰退あるのみです。

 

新規事業で失敗することより、はるかにリスキーです。

失敗したら原因を追求して、修正プログラムを考えトライするだけです。

 

根性論の世界に入ってしまいましたが…

 

 

経営が意思決定によって明暗を分けるとしたら、根性論も軽視はできません。

 

 

胸に手を当てて考えてみてください。

御社では、不安を理由にした決断をしていませんでしょうか。

 

 

注) 本コラムは、毎号、毎号ご相談者の方のご了解を頂いた後に公開しています。