とことん「本質追求」コラム第21話 『誰に売るか?』で利潤が変わる。

「このペットボトルの水を、1万円で売る方法を考えて下さい」 

セミナーに参加してくれた皆さんに「100円のペットボトル」を手に掲げて質問すると、8割程度の方は”キョトン”とされます。

中には、「ここは詐欺師のテクニックを教えるところか?」みたいな視線で見る方もいるほど(笑)

でも価格というのは、ある種不思議なものです。

売り手の立場や買い慣れている人が見ると、「アタリマエの基準値」が存在しますが、新しい売り場、新しい顧客、新しいチャネルでは、基準なんて全くありません。

たとえば、水と言うと、皆さんアタリマエのように「飲み物」だと思ってしまいます。

しかし、「水」は飲み物以外にも、「石を切断するのきの冷却用」や、「半導体の洗浄」や「医療」の現場にも使われます。

純度の高い水は、何でも溶かすと言いますから、用途開発の結果、買い手が現状よりも1万円のコストを払ってでも得する使用法があれば、1万円で売れる市場は見つかるかも知れません。

つまり、売るものを「どう捉えるか?」 誰に提案すれば「その価値をどう捉えてくれるのか?」 と、買い手である顧客によっては、その価値は全く異なったモノになってしまいます。 

喉を潤すだけなら、100円の価値かも知れません。 

しかし、「手術器具の洗浄水で既存の洗浄器具は数百万円だが、これなら器具いらずで1本1万円」となれば、固定資産を抱えずに済むという価値も生まれるし、メンテナンスなどの維持費削減という価値も生まれます。

今持っている商品やサービスの特性に「そんな宝のような価値が眠っていないか・・・」再考するだけで面白いものです。

15年以上前の事ですが、システム会社にいた頃、「アイスクリーム屋のチェーン店」の方から、こんな相談を受けたことがあります。 

「藤冨さん、時間毎の天気の実績データを正確に蓄積する方法はないかな・・・それなら、それ相応の投資ができるんだけど・・・」 と、切り出されました。 

「えっ?! 天気の実績データですか?なんで、そんなものが必要なんですか?」と聞き返すと、 「予報なら幾らでもあるんだよ。

でもね。天気の実績はないんだ。今晴れているのか、曇っているのか、雨なのか・・・これは人が認知するしか手立てがないんだよね」 とおっしゃるのです。 

もちろん、スタッフの人が時間毎に気温と天気は記録されているのですが、もっと客観性が欲しいというニーズを抱えていました。

というのも、アイスは気温や天候によって売れ筋が大きく変わるので、お客様にとって欲しい商品を的確に陳列させる事ができれば、売上は大幅に変わっていきます。 

つまり、その判断材料を入手することは、経営の根幹を司るので、それなりの投資が出来る・・・というわけです。

であれば、全国に主婦のネットワークを作り、天気の実績データを報告させる仕組みを作ればいいのでは?
とジャストアイディアベースで当時勤めていた会社に企画を持ち上げましたが、即刻却下されました(笑)

しかし・・・今となっては、全く同じ構想でウェザーニュースがそれを実現しています。 

しかも、天気予報の分野では、「気象庁」が提供する無料のもの・・・という固定観点が強かったものを、彼らは見事に「有料サービス」に転換しました。 

気象庁では提供できない細かな天気予報は、海運会社や航空会社に売っているそうです。

同社のWEBサイトを見ると、「氷河」の観測・予測まで実施しており、海運会社にとっては、喉から手が出るほど欲しいと思われるデータの取得までしています。 

飛行機にせよ、船にせよ、余分な燃料を積めば積むほど、燃費は悪くなりますから、必要最低限の燃料が把握できればコストの最適化が図れるのです。 

だから、予報データは、コスト削減の重要な指針となるわけです。 

という観点から見ると、「気象データ」が「燃料」と同等の価値を持ったと見ることもできます。 

こうなると、価格決定は「燃料」との対比を見ることができるので、高価格での販売が期待できるわけです。

「自社の提供している商品やサービスの特性」のどこにスポットライトを当てるか?

「その特性は、ある市場層にとって、利潤や損失回避に繋がらないか・・・」

そんな視点で眺めると、価格競争に飲み込まれない「新市場」が見つかるハズです。

これだけの成熟市場になると、商品の差別化は中々難しいものがありますが、「売り方の差別化」は、まだまだアイディアを捻り出せます。 

ぜひ、利益が潤沢に湧き出る新市場の発掘にチャレンジしてもらいたいものです。 

以上