『営業や経営層から、顧客ニーズにあった商品を開発しろ…と言われまして。勉強にきました』
先月、日刊工業新聞社主催のセミナーで、大多数の人が口にした参画目的です。
営業向けに開催したセミナーなのに、フタを空けてみると9割が製造部門。
企業の感度が高まっているように感じます。
Amazonの創始者ジェフ・ベゾスは「自分のもっている時間を100%とすると、かつては30%をサービスの構築に、残りの70%をプレゼンに充てたが、時代は変わった。これからは逆だ」と、時代の変化とその企業対応のあり方に言及しています。
つまり、サービス開発(ものづくり)に7割。売る仕事に3割の比重で取り組むと言う事。
一言で言うならば、マーケティング中心の企業活動を行うべし! と言うことになるのではないでしょうか。
藤冨が23歳の時にお世話になった日本オリエンテーションが、50年以上も前から発信し続けたテーマが、ようやく社会に浸透してきたのか…と感じています。
30年前は、まだまだマーケティング=市場調査 と言う認識が一般的でしたが、これからは本質的なマーケティングに取り組む企業が勝ち残っていくことは間違いありません。
本質的なマーケティングとは、「価値を創り出すこと」そして「その価値を市場に伝えること」によって、結果「買い手が自然に購買行動に移るよう企画すること」です。
ドラッカー は、マーケティングの目的は「営業を不要にする」と言う名言を残しています。
20代の頃の藤冨は、この名言に違和感を抱いていましたが、今は強く共感しています。
実際、マーケットの欲望に突き刺さる商品を企画・開発し、「営業トーク」をそのままホームページ化したら、開設以来、1億以上の粗利を稼ぐ単独ホームページも育成できました。
いわゆる「営業活動」はゼロ。
マーケティング力のみで、売上を叩き出せる時代になったわけです。
これは、インターネットが社会に浸透したおかげでもありますが、突き詰めて考えると、営業マンの役割を侵食してきたことも明らか。
ホームページからの問い合わせが増えてきたことにより、飛び込み営業やテレアポによって「見込客発掘」ができない営業マンが急増しているのを見ると、その現実が浮き彫りになって見えてきています。
見込客を自らの力で発掘できない営業マンは、もはや営業ではありません。
それに気づいた成長企業は、営業マン「ゼロ」で、事業を成り立たせるテストを実行し続けています。
テストというと語弊があるかも知れません。
「IT技術」と「コールセンター」だけで、年間1000億円以上も保険を売っているのですから。
1億でもなけりゃ、10億でも100億でもありません。
1000億円以上も売り上げている組織で営業マンはゼロ。
半ば信じがたい現実ですが、やっていることは実にシンプルで、優れた企画者と管理者がいれば、保険に限らず、あらゆる産業に横展開できるスキームです。
クソみたいなプライドを持った高給取りの営業は、これからどんどん排除されていきます。
はっきり言って、営業マンを管理するよりも、ITやコールセンターの方が、がぜん生産性が高いからです。
営業マンと見込客のコミュケーションは、ブラックボックス化されるため、セールス上の課題が抹殺されやすい。
一方、コールセンターなら、会話が録音されるのは、当たり前だから、可視化されセールス上の課題が浮き彫りになります。
平たく言うとPDCAを的確に回せるので、組織的なセールス力をより進化させることが出来るわけです。
元営業マンとして悲しい現実ですが、今度ますます営業マン不要の会社が増えてくるでしょう。
過激な発言に聞こえるかも知れませんが、すり合わせが必要な商品や技術でも、近い将来、営業マン不要論が進展する可能性は大です。
特殊溶接技術を提供する会社に興味をもった見込客…ウチの材質でも接合できるのだろうか…と言った不安に対するすり合わせ。
精密板金を提供する会社に興味を持った見込客…ウチが求める加工はできるだろうか…といったすり合わせ。
このような「すり合わせ」なら、技術部門でも出来るし、パターン化出来れば、パート社員で組織したコールセンターでも出来る。
さらに言えば、今後は、全てITで解決される可能性もあります。
すり合わせの経験をデータベース化するのは、人間よりもITやAIの方が得意。
ビジネス・プロセス(購買プロセス)をデザインする設計者と、それを実装するプログラマーに初期投資をする覚悟があれば、事業を継続するランニングコストは劇的に低減されます。
説明とすり合わせしかできない無能な営業マンが不要になるからです。
これからの企業活動は、ジェフ・ベゾス氏が指摘するとおり、ものづくりに7割の力を注ぐこと。
そして、残りの3割は、自社のビジネス・プロセス(購買プロセス)を可視化して、仕組みを再定義し続けることに力を注いだ企業が生き残っていくでしょう。
こういったことから考察しても、企業活動として外してはならない視点は「顧客の欲求を満たす商品やサービスを企画・開発し、それを対象市場に的確にコミュニケートする」こと。
その感覚を吸収しようとする企業が増えてきていることに、藤冨は明るい未来を感じています。
御社は、顧客視点から逆算した事業活動を実行できていますか?
<補足>
市場ニーズを組織にフィードバックできる「未来型の営業マン」は、これからも重宝されます。
逆にいうと、目の前の顧客に言われたことと市場ニーズの違いが認識できない営業マンは、淘汰されていくでしょう。