とことん「本質追求」コラム第586話 販売が成立する公式から「売れる策」を考える方法

 

『新商品がまったく売れません。これどう思われますか?』

コラムの読者さんから、相談事のメールを頂きました。
高飛車になるつもりは毛頭ありませんが、プロとして活動していますので、安直な回答をすることは、できかねます。
でも、コラムのネタをご提供頂くのは大歓迎です。
ご質問にダイレクトにお答えする内容にはなりませんが、この場を借りてお答えしたいと思います。

ちなみに、該当商品のホームページは拝見し、おおよそのアタリはつきましたが…出し惜しみをしてダイレクトな回答がしないわけではありません。
とても重要なことなので、最初にお話しておきますが、答えをすぐに知りたがるのは、決して、良い結果をもたらしません。

上手くいっても、成功要因が腑に落ちていないので、時間経過と共に、その事業が停滞していきますし…
失敗したら失敗したで、他人のせいにするだけで終わります。

お互いにとって、何のメリットもないのが、その場しのぎのテキトーなアドバイスだと
藤冨は考えています。

そもそも「新商品が売れません。ちょっと見てください」とURLをポンと送ってきて、成功するための施策を考えることなんて、天才マーケッターにだって出来ません。
もちろん、失敗している要因のアタリはつけられます。
しかし、成功させるための施策というのは、対象となる顧客像、競争環境など顧客を取り巻くあらゆる環境を掌握した上でないと、クリエイティブできないものなのです。

そうです。
すべての環境を掌握し、原理原則に則って、新しい「道筋」を考えなければなりません。

全ての環境とは…
・消費者が「対象商品」を必要とする背景
・その背景の中で、消費者が対処している代替案(または競合商品の利用)
・代替案を続ける上での「課題」や「問題点」

などの真実(ファクト)をテーブルの上に並べることが最初の第一歩となります。
ファクトなので、思い込みではいけません。

特に、代替案における課題や問題点を、勝手に妄想して企画するケースが多々ありますが、妄想の上には、虚構の世界しか描けません。
実際、消費者が困っていることや満足していない「生の声(ファクト)」を踏まえた上で、はじめて「検証できる成果」が生まれるのです。

そう考えると、PDCAを回せ!とよく言いますが、妄想の上に出来合った企画で、正しい評価(Check)なんて出来るはずがないことが分かります。

販売が成立するには
「顧客が抱えた課題の深刻度<提案する解決策(商品)×解決策の提案方法(売り方)」
という公式が成り立つ時です。

顧客の抱えた課題の深刻度の「変数」があやふやだと、提案する「解決策(商品)」が悪いのか、それとも「提案方法(売り方)」のどちらが原因で売れないのか…が分かりません。

事例をもって理解を深めてみましょう。

例えば…
焦げ付かないフライパンを販売しようとした場合、消費者を取り巻くファクトを洗い出してみましょう。

・焦げ付くと、料理がまずくなる。
・家族に、文句を言われる
・もっと焦げ付くと、食べられなくなる。
・そうなると、食材が無駄になる。
・フライパンを洗う時間が無駄に増える

などなど、普通のフライパン(代替案)を使っていることによる「課題」が存在しています。
ここの事実を拾い上げるのです。

・フライパンを焦げ付かせて困っている人の割合は?
・どの程度の頻度で焦げる?
・そのうち、料理がダメになるケースはどの程度???

と、実際の消費者の声を聞くと、「課題の深刻さ」が浮き彫りになり、その対策商品としての焦げ付かないフライパンの「価値」がわかってきます

もし、問題が深刻であるにも関わらず、売れない…としたら、「商品」または、「売り方」のどちらかに原因があるのです。

原因を要素分解できれば、そこで、問題解決は難しくありません。

商品の側面から考察すると…
・商品のもつ解決策が顧客にとってベストでない?
・課題の解決に対してコスパが悪い?

売り方の側面から考察すると…
・想定顧客層に情報が届いていない?
・情報の魅力が伝わらない?
・情報が信頼されていない?
・提案内容を採用するのが面倒に感じる?
・提案内容を採用することによるリスクを感じている?

などなど、商品が売れる原理原則から外れていないかチェックしていくことで、リカバリー策を打ち出すことが可能となります。

重要なことなので、もう一度言いますが、販売が成立するには
「顧客が抱えた課題の深刻度<提案する解決策(商品)×解決策の提案方法(売り方)」
という公式が成り立つ時です。

売れないのは、商品が悪いのか、それとも売り方が悪いのか?
それを考える以前の問題として、「顧客が抱えた課題の深刻度」を完全掌握することが大切です。

課題の深刻度がわかったら、それを解決する商品として、ベストな提案ができているのか?
ベストな提案ができているのに、売れ行きが悪いとしたら、売り方に問題があるのか?
とドリルダウンして問題点を浮き彫りにするのです。

御社は、顧客を取り巻く真実(ファクト)を掌握した上で、商品を企画開発し、販売戦略を立案していますか?

[著:藤冨雅則]