とことん「本質追求」コラム第587話「売りモノ」と「売り方」をセットで企画すると売れる!

 

「今週のコラム“販売が成立する公式から売れる策を考える方法”は、本当にその通りでした。お陰様で売上も順調に伸びています」

1年ほど前にコンサルティングをした企業の社長から、嬉しい報告を受けました。
先週のコラムを読んで、改めて「売りモノ」と「売り方」はセットで企画することの重要性が理解できたとのこと。
とても優れた「売りモノ」なのに、売り方がズレているばかりに売れないケースは驚くほど多いのですが…
そもそも論として、なぜ「売りモノ」と「売り方」はセットで企画する必要があるのか…

藤冨が様々な企業と一緒に「波及営業」を実践する中で確信した3つのポイントを解説したいと思います。

1つ目は、顧客を見失わないため
2つ目は、購買意思決定基準に焦点を合わせるため
3つ目は、売りモノの脆弱性をスピーディーに補強するため

の3つです。

まず、1つ目の顧客を見失わないため…事例を通じて解説したいと思います。

以前、総合建材メーカーの開発部門から「閉めたままでも換気できる窓」の売れ行きが伸びない…と相談を受けたときのことです。
「窓を閉めたままで換気できる」商品がもたらす顧客メリットは何か…
思いつく限り、ブレインダンプ(頭の中をすべて書き出す)してもらうと…
・寒い冬でも窓を開けずに換気できる
・騒音がうるさい時でも窓を開けずに済む
などのメリットが浮き彫りになってきました。

顧客メリットが明確にイメージできると…
・寒い日に窓を開けたくなる衝動に駆られる人たちは、誰か?
・窓を開けたいのに騒音がうるさくて開けられない人たちは、誰なのか?
と、誰が「閉めたままでも換気できる窓」を喜んで買ってくれるのか?が、クリアになります。
つまり、商品から得られるメリットを追求すれば、ターゲットは自ずと厳密に定義できるようになるのです。

それにも関わらず「換気できる窓は画期的な商品だ!」と作り手満足の高飛車セールスをすれば、肩透かしを食らうケースが多くなります。
そもそも、建材メーカーの営業先はマンションデベロッパーやゼネコンです。
仮に、マンションやビルに入る住人が「換気できる窓はいいですね!」と評価してくれても、コストアップになるデベロッパーやゼネコンからすれば、認知されていない画期的な商品なんて黙殺すれば良いだけどの話です。

ただし、です。
もし換気できる窓がデベロッパーやゼネコンの「ウリ」になる!と判断されたら、別の話になります。
・寒冷地のマンション
・飛行機や新幹線、高速道路など騒音がひどい地域
など、ターゲットをより絞っていけば、効率的に営業活動ができるようになります。
逆にターゲットを絞らずに、全方位的にデベロッパーやゼネコンに行って営業したって、商談相手の琴線に触れることはできません。
うまくいかない商談が続けば、営業モチベーションがだだ下がりになるのは、ある意味アタリマエ。
「売りモノ」と「売り方」は、セットにして考えないと、顧客を見失ってしまうことが多いのです。

2つ目の購買意思決定基準に焦点を合わせるため…も事例を通じて解説します。
以前、『リビングに置くペット用のお墓』を販売している方から相談を受けたケースです。
開発者自身が愛するペットを失った経験から「お墓に入れるのはいや、いつでも一緒にいたい」と製品化に漕ぎ着けたそうですが…
3年以上も全く売れていないとのことでした。
ホームページを開設しても、広告を出しても、一向に問い合わせもない状態。
どうしたものか…と、頭を抱えていました。
ターゲットは、当然ながら「ペットを失った人」です。
しかし、よくよく顧客心理を深堀してみると、ペットを失った人でも、今日ペットが亡くなった人と、ペットを失ってから月日が経った人とでは「亡くなったペットとの向き合い方」が変わってきます。
亡骸(なきがら)とどう向き合うか…
それを一番深く考える瞬間は、当然ながら今日愛するペットが亡くなった時です。
そうなると、ペットの火葬する業者さんを販売代理店にする方が効果的であることがわかります。
火葬業者は、遺骨を渡す際に、どのような提案をするのか?
一般的には、霊園を紹介したり、遺骨入りのキーホルダーを提案したりしています。
そこに『リビングに置くペット用のお墓』を潜り込ませるためには、どのような提案をすれば良いのか…
このような思考ロジックでアプローチをすると「売りモノとしてのあるべき姿」や「火葬業者が売りやすくなるための策」が見つかってくるのです。
購買意思決定する瞬間から逆算すると、「売りモノ」と「売り方」のあるべき姿がクリアになっていくのです。

3つ目の売りモノの脆弱性をスピーディーに補強するため…については、非常にシンプルな概念です。
要するに、商品の企画段階や構想段階から、営業となる対象顧客にテスト・セールスをしてみるのです。
これは新商品であろうと、既存商品の改良であろうと同じです。
商品が出来上がる前に、反響度合いがわかれば、無駄な製品開発がなくなります。
・想定していた機能は不要だった…
・必要と思った性能は、オーバースペックだった…
・パンチ力のあるセールストークを打ち出すには、こんな要素が必要だった!
テストセールスをすれば「売りモノ」を作る前に「売り方」とセットで効果的なアウトプットが打ち出せます

常識的には、製造部門、開発部門などの「ものづくり」の部門と、顧客と接する「営業部門」が機能分化しているのが普通です。

しかし、買い手の立場からすれば、営業も製造も知ったこっちゃありません。
買い手は、自分に必要な商品、役立つ商品が欲しいだけなのです。

御社は「売りモノ」と「売り方」をセットで企画していますか?

[著:藤冨雅則]