とことん「本質追求」コラム第588話 諦めないと成功する…は、本当なのか?

 

『諦めなければ、成功するって言いますけど、それって誤解を与える危険なメッセージだと思いませんか?』

先日、コンサルタント仲間と話をしていた時に出ていた話題です。
私も『誰でも成功できる』とか『諦めなければ成功する』と言う言葉は、極めて無責任な発言だと感じていました。

今日は、誰でも成功できるのか、そして諦めなければ本当に成功できるのか。
過去、思うように売れなかった商品も売れる!に変えてきた経験から、藤冨の見解をお伝えしたいと思います。

諦めなければ成功する…。
逆に言うと、諦めたら成功はできないので、ある意味正解かも知れません。
しかし、間違っているやり方を続ける限り、いつまで経っても思うような結果はでません。
そう考えると半分間違っています。

また、誰でも成功できる…と言う発言も、分野とレベル感を問わなければ、それぞれの人なりの成功は感じられると思います。

しかし、私はどんなに頑張っても野球選手にはなれませんし、公務員にもなれません。
野球はセンスがありませんし、公務員は性格的に不向きです。

人間には、持って生まれた資質があります。
会社にも、法人としての資質があります。

そして、その資質にあったドメイン(生存領域)は、間違いなく存在しています。

巨人軍の名選手であり総監督も務めた桑田真澄さんの息子、Mattさんは、小さな頃から野球をやり、父親もその才能を高く評価していたと言います。

しかし、当の本人は、小学6年生で「将来、野球はやらない」と決断します。

50メートル走を5秒台で走り、野球のセンスもあったというMattさん。
いくら得意でも、性格的に合わないと判断したそうです。

おそらく才能は十分にあるので、野球選手になったとしても、それなりには活躍したかも知れません。

しかし、それでも、野球は性格的に合わない…と自覚している以上、父のように一流にはなれないでしょう。
成果を上げ続けるためには、高いモチベーションの元での持続的な努力が必要だからです。

この厳粛な真実を無視して、誰でも成功出来る!と乱暴な発言をするのは、やはり無責任だとしか言いようがありません。

また、才能もない場合には、もっと大きな悲劇が訪れます。
努力しても努力しても成長の実感が得られないのですから、自尊心はズダボロになります。

他の道や役割が変われば、才能を発揮できるのであれば、Mattさんのようにサッサと路線変更した方が人生や会社は良い方向に向かいます。

実際、藤冨もサラリーマン時代に営業部門の長になった際、営業の性格に向かない部下に全く別の役割を与え、営業を一切させなかったことがあります。

具体的には、営業部門と開発部門の架け橋役を担ってもらいました。

営業部門の伝えたいことを、開発部門が受け取りやすい書式で翻訳してもらう業務です。

営業からすれば、面倒なコミュニケーションがなくなり、開発からすれば、無責任な口伝ではなく、論理的かつ明文化された情報共有となるため、面倒な確認作業がなくなります。

才能が異なることを両者が理解し、協調して組織の目的を達成しようとする努力は、会社に大きなメリットをもたらしてくれました。

開発スピードがあがり、納品が早くなるので、キャッシュフローに好影響を与えただけではありません。
両者のコミュニケーションが円滑になったため、信頼関係が生まれ、業績が飛躍する土壌が育まれたのです。

人間社会には、様々な仕事や役割が存在しています。
当然ながら、成果を出すために必要な「才能」も仕事の数だけ存在しています。

それでも、なぜか会社も学校のように、評価軸が極めて限定的で画一的な制度を採用しています。

評価の平等という名のもとに、結果人間に不平等を強いているのが現実なのではないでしょうか。

誰でも成功できるという考え方は、それぞれ柔軟に設定された評価軸の元に運用されるのであれば、全面的に賛成できます。

しかし、歪に固定化された評価軸の元で、成功の定義をするのは、あまりにも乱暴と言わざるを得ません。

誰でも成功できる…という詭弁で、人をダメにするのは、あまりにも酷すぎます。

また、諦めなければ、成功する…という妄想も、時と場合によっては、無意味に人や会社を窮地に追い込む可能性があります。

諦めなければ成功する…と呪文のように唱えたって、売れない商品は売れません。

実際、藤冨がコンサルティングの相談を受ける案件では、商品力がないのに、営業努力をし続けて苦しんでいる会社を幾度となくお手伝いしてきました。

・商品の見せ方を変えるか
・販売する市場を変えるか

商品力が滲み出てくるまで、コンセプトを磨き上げなければ、会社の存在価値は生まれてきません。

存在価値がなければ、当然ながらお客様は振り向いてくれません。

これまで売れていたのに、売れなくなった場合は尚更です。

強力な競合が現れたのか。
他に良い代替案を顧客が見つけてしまったのか。

原因を追求せずに、これまでと同じ売り方をしたって、売れっこないのです。

商品力がなくなったのなら、商品力を向上させるしかないのです。

ここで諦めずに営業力だけを向上させようと思ったら…
お客様を騙すしかなくなります。

もし、その選択肢を選ぶならば、その会社は早晩市場から撤退を要求されるでしょう。

誰でも成功できるのは、その人、会社なりの資質を見極めた上で、最適なドメイン(生存領域)を見つけた場合のみに言えることです。
諦めずに成功できるのは、その人、会社なりの存在価値を市場が認めた場合のみに言えることなのです。

前提条件を明確にしないメッセージは、無責任極まりありません。

あなたは、揺るぎない前提条件の元に、適切な努力をしていますでしょうか?

[著:藤冨雅則]