とことん「本質追求」コラム第613話 会社も社員も成長する仕組みのつくり方 

「個人の成長を促すように会社が仕事を設計すべき…という前回のコラムの指摘は、頭では理解はできますが…実行に移すのは難しいように感じます。具体的にどのように設計すれば良いか、概略だけでも教えて欲しいです」

読者さんから先週のコラムに対する質問を頂きました。
反響をもらえると張り合いが出ます!
感謝の意を込めて、ご回答させて頂きます。

結論から申し上げると、顧客視点で掲げられた「経営理念」と社員の成長を促す「行動指針」を明確にすることが「仕事の設計」の出発点となります。

藤冨は、サラリーマン時代に勤めていたITベンチャーの「経営理念」が大好きでした。

この経営理念によって、自己成長の指針にしてきたといっても過言ではありません。

一部抜粋して、ご紹介します。
・企業はなによりも人であり、自主性と起業家精神を重んじ、ひとりひとりの行動を重視します。
・製品・サービスのすべての基準は、お客様であり、お客様に密着する姿勢を日々の基本とします。
・厳しさと緩やかさの両面を同時にもった、フラットで柔軟な組織づくりに心がけます…(他、省略)

この経営理念を毎週月曜日に唱和するのですが、読むたびに活力が漲るのを感じていました。

そんなこと言うと「いやいや藤冨さんだけですよ。ウチにも経営理念はありますが、誰一人として感動なんかしてくれませんよ」と言う声が聞こえてきそうですし、実際そう言われたことも幾度となくあります。

しかし、経営理念が徹底できるか否かは、会社のリーダーの姿勢と行動次第です。
リーダー自らが理念を徹底すれば、社員も理念を体現せざるを得ません。

絵に描いた餅のような経営理念では、リーダー自身が行動に移せません。
ましてや、顧客視点が織り込まれていない経営理念では、理念を貫き通すほど業績が悪化することがあります

顧客起点で掲げられた経営理念を貫き通すことで業績が向上していくように設計することが何よりも大事なのです。

藤冨が勤めていたITベンチャーは、目標通り「JASDAQ(現東証グロース)に上場」を果たしましたが、今思い返しても同社の理念は素晴らしかったと思います。

例え、社長がああしろ、こうしろ、と命令してきても「製品・サービスのすべての基準は、お客様であること」でしたし、「自主性と起業家精神を重んじる」と理念に掲げられた以上、自らが責任を取る覚悟さえあれば、自主的な行動が、許されました。

もちろん、決して自分勝手な行動をしても良い…という意味合いではありません。
あくまでも、顧客のためであり、起業家精神と謳う以上、結果としての業績向上にも繋げる必要があります。

ここは非常に重要なポイントなので補足しておきます。
顧客のため=業績向上 という公式は、成り立たないことがあるためです。

これを抑制するのが、行動指針です。

同社の行動指針には明記されていませんでしたが、藤冨は自主的な行動指針をつくって関連部署を巻き込みながら部を運営していました。

例えば、顧客のため…という標語は、解釈の仕方によって、結果的に誤った方向にいってしまうことがあります。

『顧客のため≠業績向上』となるケースは大きく分けて2パターンあります。

一つは、顧客の要求にバグがある場合。
二つ目は、顧客の要求が、横展開が困難な場合です

こういった解釈のエラーを抑制する行動指針があると、会社のためにもなるし、自己成長にも繋がっていきます。

例えば、顧客の要求を鵜呑みにするのではなく、要求の背景、動機、目的など要求をコンテキストで理解すること…という行動指針があったとしましょう。

すると、顧客の要求にバグがあっても、営業段階で修正することで、顧客からは信頼を獲得でき、開発や生産部隊に余計な負担(工数)をかけずに済むので、利益を損なうリスクを未然に抑制できます。

顧客の要求にバグがあるケースは、目的が手段化されていたり、技術進化がアップデートされていないケースなど、さまざまですが、結構な確率でバグっているケースがあります。

横展開できない顧客の要求も、フタを開けてみれば、汎用性を持たせた方が、真の満足を顧客側にもたらすことも多々あるのです。

顧客から言われたことをそのまま関連部署に伝えるなら、「ボイスレコーダー」で十分です。
最新のボイスレコーダーなら、テキスト化までしてくれます。
しかも、要約までしてくれるので、バイアスのかかりやすい人が介在するより、よっぽどマシな作業をしてくれます。

つまり、そこに人材の価値はないのです。

前回のコラムでもお伝えした通り、作業と仕事は違います。

上述を例とするならば、作業とは、顧客の声を関連部署にそのまま届けること。
仕事とは、顧客の要求の裏側にある問題点などのコンテキストを理解した上で、関連部署と共有し、我々は何をなすべきか?
という「問い」を発することです。

作業をさせていては、人材は成長しません。
仕事をさせて、初めて人材は成長します。

ユニクロやAppleのファブレス経営や、アイリスオーヤマのメーカーベンダー経営は、まさに組織全体で「作業」を排除し、「仕事」をさせる究極のモデルとも見て取れます。

会社が成長するから、優秀な人材が定着するのであって、優秀な人材がいるから会社が発展するのではありません。
顧客満足をもとに会社が成長していくような【経営理念】を掲げ、理念を正しく実行に移す【行動指針】を策定することが「仕事の設計」するという概念になります。

御社の経営理念は、顧客満足をもとに会社が成長していくように設計されていますか?