とことん「本質追求」コラム第614話 追悼コラム「ビジョンが会社を成長させる!」

「顧客視点にたった経営理念で社員を引っ張るという考え方には強い共感を覚えました。しかし、パワフルな経営理念を掲げたら、社員がついてこれないように感じます。何か対策はありますか?」

読者さんから先週のコラムの感想を頂きました。
一方的な発信ではなく、会話しているようで、楽しくなります。
快くご回答したいと思います。

但し、耳障りは良くない回答となります。
炎上覚悟で結論から申し上げます。

「ついてこれない社員は去れば良い」

・いやいや、そんな過激なことを言ったら皆んな辞めちゃいますよ。
・人手不足の時代に、辞められてしまったら、補充ができず経営を圧迫してしまいます。

そんな懸念を抱かれるのは、当然だと思います。
「言うは易く行うは難し」であることも重々承知しています。

しかしながら、会社がどこを目指すのか…によって、選択は決まってきてしまいます。

言うまでもなく、営利企業である以上、競争環境に晒されています。
顧客により優れた提案をしようと、必死になっています。
生き残りを賭けてシェアを拡大しようと、競合もしのぎを削っています。

もしも、競争環境が激しい中で、売上を拡大させようと思うのなら、外を向く必要性があります。

成長の芽、勝ち目は、外にしかないからです。
顧客により良い提案をして、歓迎されながら収益を上げて行くのが「外」の世界です。
社員一丸となって「外」に向く必要性があるときに、大切なのが理念に基づくビジョンです。

我々は、何を為すべき存在なのか?
志あるビジョンの元に、人々は使命感を覚え、自己を成長させながら、その実現を図ろうとします。

少なくとも、藤冨はサラリーマン人生を含めてそう感じています。

と、ここまで書いたところで、たった今、めちゃくちゃ悲しい知らせが入りました。
クライアント企業の社長さんがお亡くなりなったとの連絡です。

10日前に一緒にゴルフに出掛け、帰りの車中で2時間近く語り尽くたビジネスプラン。
社長の使命感が滲み出た素晴らしいプランを企てていた矢先のことです。
今、溢れでる涙を拭いながら、このコラムを書き綴っています。

本来なら、このコラムの事例は今絶好調の三菱自動車が発売したピックアップトラック「トライトン」を事例に書くつもりでした。

しかし、追悼の意を込めて、他界したS社長の遺志を書き記しておこうと思います。
(具体的な内容は、事業が引きづかれる可能性が高いので、抽象度を高めておきます)

S社長とのお付き合いは、2015年から始まりました。

学習塾向けのテスト教材を作成しているが、M&Aが進み、市場環境が熾烈になりつつある。
早めに新市場開拓をしておきたい!と言うご要望を受けたところからスタート。

半年間のミーティングの末、私立の中高一貫校向け入試テストの受託請負ビジネスを仕掛け、初年度から数社受注。

私たちのビジョンは、自社の販路拡大だけでなく、一生懸命勉強してきた子供達の努力に報いる環境を作りたい!そこからスタートしたので、それが市場から評価された時の喜びは今でも忘れません。

当時、公立の中高一貫校は、とても倍率が高く、遊びたい盛りの小学生は、日夜勉強に勤しんでいました。
適性検査と呼ばれる試験対策が必要で、志望校に落ちると悲劇。

周りの私立は、適性検査ではなく、旧来の試験である5教科だったので、努力は報われず公立に行かざるを得なくなります。
倍率が高いと言うことは、それだけ悲劇を味わっている子供達が大勢いるということ。

私立の中高一貫校も、適性検査を導入してくれれば、子供達の努力は報われる可能性がある。
学校側も、受験者が増えれば、それだけ売上(受験料)も増える。
お互いWin-Winじゃないですか!と盛り上がったビジネスプラン。

9年経った今も、毎年1億程度の売上が計上できているとおっしゃっていました。
なので、Win-Win-Win。
三方よし!の事業は、関与する人たち全てに自己実現をもたらす素晴らしい世界です。

しかし、時が過ぎるごとに新たな課題が出てきました。
入試試験の受託が増えると言うことは、売上が上がれば上がるほど、仕事は忙しくなります。
販売管理費は、売上と共に逓増するという工業系企業でもあるあるの課題です。

そこで昨年より「パッケージ型商品」を作ろう!と、プロジェクトを立ち上げてもらい関与していました。

4月18日のゴルフ帰り。社長はおっしゃっていました。
近い将来、文理融合が重要視される。大学に入る前の子供達全てに本質的な思考力が高まる教材やテストを提供したい。子どもたちに大人と同じような課題を与え、どのようなプロセスで考えると、回答を導き出せるのか…それを提供したいんですよ!」と。

聞いた瞬間、身震いを起こしました。
具体的なアプローチを出し合いながら、めちゃくちゃ盛り上がり、同乗していたS社長の親戚である青年がこう進言してくれました。
「私、めちゃイメージできます。ゴールデンウィーク中にたたき台作るので見て下さい!」と!

その青年は、元教員です。
今は学校の教育に新しい風穴を開けようとベンチャー企業を経営しています。

彼が同社に関与してくれると百人力。
彼が5月4日までにたたき台を作り、S社長を交えて、我が家でお酒を飲みながらの方向性を最終確定する段階でした。

S社長も志し半ばで、無念だったと思います。
青年が社長の最後の想いを引き継ぎ、S社長が経営する経営陣と一緒に、新規事業の花開かせてくれることを切に願っています。

最後に、追悼の意を込めて、本コラムで書きたかった主旨に、話を戻したいと思います。

誰かのため、社会のために、志を持って事業に取り組むとき、人は実力以上の力を発揮します。
ビジョンは、強力なる推進力をもたらします。

それでも、その時に「そんなビジョンには興味ない。私はこれまで通りにマイペースでやるよ!」という社員がいたら、組織は成り立ちますか?

個人あっての組織ではありません。
組織あっての個人です。
だから、法人と呼ぶのです。

御社は、奮い立つようなビジョンで、組織を牽引していますか?

追伸
S社長、天国で会社の皆さんを見守ってあげて下さい。
ご冥福をお祈り致します。