とことん「本質追求」コラム第120話 全社員の士気を上げる営業マン評価制度とは

「営業マンなんだから、売るのはアタリマエですよ」

 

セミナーや講演会で時々、藤冨が吠えているこの言葉。

それを聞いた経営者の方々から、「あの話は良かった。ぜひ今度我が社に来て話をしてほしい」とおっしゃって頂く事があります。

 

残念ながら藤冨は、よほど主旨に共感しない限り「社内講演会」は行わないのですが…

 

コンサルティングを開始するにあたり「オリエンテーション・セミナー」を開いたり、コンサルティングの中で戦略が固まり、その主旨を全社員で共有するための「社内ミニセミナー」を行う場合はあります。

 

このとき、社長さんと「どのような話をしましょうか?」と打ち合わせをするのですが、意外にもリクエストが多いのが「営業マンは売るのがアタリマエ…というあの話を喋ってほしい」というものです。

 

売るのがアタリマエなんだから、売れるまで会社に帰ってくるな!
的な、根性論の話ではありません。

 

営業マンは、売るのが仕事なんだからイチイチ結果が出るたびに奨励するのは、オカシイ……という話です。

 

と言うのも、私自身営業マンの個人評価制度に強い違和感を覚えていました。
二十代後半で、バリバリ現場で働いていたときの事です。

売れないから、ひがんでいたわけではありません。
逆です。
自主的に朝6時に出勤し、夜まで営業に出掛け、売りまくっていたときの「考え」です。

 

結果を出したときに褒められるのは嬉しいのですが、「報奨金」とかを出されると、屈辱的に感じられたのです。

 

ニンジンをぶら下げて走らされている馬じゃないんだから…と。

 

それだけではありません。

仕事の本当の成果は「売った瞬間」ではなく、「顧客から笑顔がこぼれたとき」だという信念をもっていたからです。

 

顧客の笑顔を作るには、営業マンだけではなく、それを支える「製造部隊」や「顧客サポートをする部隊」の存在なくして実現できません。

 

当時私が働いていた会社の場合は、情報システムを販売していたので、システムを顧客に合わせて微調整してくれる開発部隊や、システムの使い方を指導するサポート部隊の存在なくして、顧客の満足度向上は上げられなかったのです。

 

そこが手薄だった時代…。

営業はとにかく売ってこい!的な風潮だった私の新人時代には、正直いって顧客の満足度は、高くはありませんでした。

 

営業マンの心理を考えて下さい。

 

お客さんが喜んでくれると分かっていて売り込む営業マンの心理と、そうでないと分かっていて売り込む心理。

 

どちらが「営業の説得力」が強くなるでしょうか?

 

儲っていない会社にいくと、大半の企業の営業マンは「自社商品」に自信をもっていません。

心が負けている状態で営業にいっても売れるハズがありません。

 

社内で評価を得たいから、顧客の満足を横に置いて、勝ちたい一心で営業成果をもぎ取ってくる人もいるかも知れません。

 

でも、そのような状態が続けば続く程、企業の弱体化は進んでしまいます。
顧客から支持をされていないのに、数字だけが上がっているからです。

 

サラリーマン時代に、この危機感を強烈に感じたのです。

そこで、組織の壁を取っ払って、開発もサポートも、営業も一緒になって顧客を満足させていかなくてはならない…と決心しました。

 

当初、社長も上司も難色を示していました。
それでも、受注金額が数百万円から数千万、億単位と引き上がっていくと同時に、お客さんの満足度も明らかに上昇しくと、社内の空気も変わっていきました。

 

3年程たって、その成果が定着してきたのをみた社長はようやく認めてくれたのでしょう。

勝ち取った大型商談に対して10万円の報奨金を出してくれたのです。
営業の私だけに……。

 

営業会社にいた時代は、報奨金に対して違和感を覚えながらも受け取っていました。
でも、この時勤めていたメーカーでは、その報奨金に違和感どころか嫌悪感を覚えたのです。

 

この成果は「営業」だけで勝ち取ったものではない…と。

 

その高ぶった感情のまま、もらったその場でサポート部隊に報奨金を配りました。

 

社長の想いを踏みにじるような行為ですが、それでも、営業が仕事を取ってくるのはアタリマエである。仕事は、顧客の満足度がゴールなのだから、その時点で「チームを奨励すべきである」という考えに基づいた行動なので、当然のことをしたまで…と思っています。

 

今の世の中、「間違った個人主義」が日本にインストールされているような気がしてなりません。

 

アメリカのように国民性が「個人主義」に根ざしていれば、仕事の評価も個別主義で良いかも知れません。

 

しかし、日本の国民性は「集団主義」です。

誰を…どのようなくくり方でチームを奨励すれば、組織全体のやる気が上がっていくのか、今一度真剣に考えるべきときが来ていると……感じています。

 

波及営業という一連の戦略手順が「商品の捉え直し」と「市場選定」から入っていく背景は、実はこういった思想が横たわっています。

 

営業は売るだけですか?それが仕事ですか?
私は違うと思います。

 

営業マンの仕事は、市場と会社のパイプ役です。
パイプがうまく繋がったときに「受注が取れる」
それ以上でもそれ以下でもありません。

 

であれば、個人評価制度を今一度本質から捉え直すべきではないでしょうか?

いま儲っている会社は「チーム評価制」を取り入れているところもあります。
これからの時代、見逃すことのできない評価制度だと思いますが…

御社は営業という仕事をどのように捉えていますでしょうか。