とことん「本質追求」コラム第131話 市場を絞ると売上があがる理由

「需要は他にもあるのに、なぜわざわざ市場を絞る必要があるのですか?」

 

先日、中小企業家同友会の町田支部で、講演をさせて頂く機会に恵まれました。

90分という限られた時間でしたので、充分にお伝えすることが出来なかったかも知れません。それでも質疑応答の30分間では、ご質問がたくさん頂き時間切れになるほどでした。

そのためか、メールで後からご質問を頂く方もいて、とても有意義な場であったと感謝しています。

その中で、とても良いご質問があったので、コラムで取り上げさせてもらうことにしました。
その質問が冒頭の「需要は他にもあるのに、なぜわざわざ市場を絞る必要があるのですか?」というものです。

 

たしかに、全方位型で営業アプローチした方が、受注の取りこぼしがないように感じることと思います。

 

しかし、八方美人スタイルの営業アプローチは、一見「見込客」が増えているようでも、真の検討客になる確率は低く、労多くして結果がでにくい営業活動に終始してしまいがちです。

 

そもそも論として、受注が成功するのは、我が社(私)のあるべき姿が実現されたり、問題が解決されたり、欲求が満たされると確信を持つから契約に至るのです。

 

確信を持つためには、具体的なイメージを商談相手の脳みそに想起させなければなりません。

具体的なイメージを想起させるためには、具体的なメッセージを発信する必要があります。

ところが、全方位型…つまり“より多くの対象”に響くようなメッセージを発信しようとすると抽象的な言葉や表現になります。

 

これでは、具体的なイメージが湧くどころではありません。

購買心理プロセスである「AIDMA」の「A」にも引っ掛からず、購買心理プロセスを移行させていくためのスタートラインにすら立てないのです。

 

※  AIDMA
商品を認知し、購買に至までの心理プロセス。
Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の段階を経て、購入に至る。従って、私(我が社)と関係のある話だ…という“注意”をまず惹き付けないといけない。

 

従って、「あたな(御社)にとって…」という個別的なメッセージを発信する必要があるのです。
これが同一市場を狙う1番目の理由です。

 

また、他にも2点ほど、理由があります。

 

2番目の理由は、顧客心理の影響を鑑みています。

波及営業では「あの会社(人)が買ったのなら、我が社(私)も欲しい」という心理状態をつくり出していきます。

つまり、同調行動を起こす仕掛けを作っていくのですが、我が社(私)とは関係のない実例には、同調行動は起きにくいものなのです。

ラーメン店に行列が並んでいるのを見た通行人が、ラーメン好きなら興味を惹き付けられますが、ラーメン嫌いの人には関心すら惹き付けられません。

 

つまり、我が社(私)と同一グループに所属している取引実績にしか、見込客は関心を示さないのです。

それは、時に業種であったり、規模であったり、趣味であったり…と様々なグループのくくり方になります。

どのようなグループのくくり方であれば、「私と同じグループだ」と、見込客自身が自覚するのか…

この洞察力が、波及営業を成功させるキモでもあるのです。

 

3番目の理由は、同一市場への業務に集中することで、売り手側に「ナレッジ」が蓄積され、営業力強化に直結するためです。

 

顧客が商品を購入するには、「理由」があります。

 

例えば、広告であれば「集客に繋がる」「税金対策」「ステイタス」「社員の士気向上」など、顧客によって様々な購入の理由付けがあります。

 

この理由付けの引き出しが多ければ多い程、受注の確度は高くなります。
当然の事ですが、販売実績が多ければ多い程、この引き出しは増えていきます。

同一市場を狙えば、この引き出しは効率的にストックされていきますから、バラバラな営業活動よりも、はやく売れる理由付けが集ってくれるのです。
また、承諾心理の特性として、人は他人の言葉よりも自分の言葉に説得・納得されやすいという傾向があります。

 

つまり、営業マンの説明よりも、顧客自身が発する言葉に対して納得しやすいのです。

デキる営業マンはこれが分かっていて、質問によって、自分の欲しい答え、言ってほしい答えを導き出す「質問」をしてきます。

そして、その質問も相手が答えやすいように「他社ではこんな実例がありますが、御社ではどうでしょう?」という『誘い水』を出す事で、商談相手をしゃべりやすくしています。

 

この『誘い水』がポイントで、「理由付け」同様に引き出しが多ければ多い程、商談を有利に運ぶことができるようになるのです。

 

「誘い水」と「理由付け」のナレッジの蓄積は、このように商談の成功確度を高めていきます。

これを営業マン個人に焦点を合わせるのではなく、全営業マンが意識するよう仕向けることで、営業部員全体の底上げが繋がっていくことが出来る…というわけです。

 

1.響くメッセージの確立
2.顧客心理の醸成
3.ナレッジの蓄積

この3つの理由により、藤冨は同一市場を攻め込むことをオススメしています。

ちょっとした意識の差は、結果に大きな差をもたらします。

 

御社の営業部隊は、同一市場を意識的に攻め込むスタイルをとっていますか?