とことん「本質追求」コラム第168話 組織的に営業力を強化する方法

 

「なるほど…確かにちゃんと調べないと説得力にかけますね」

 

様々な業界で波及効果の高い営業手順の設計をお手伝いするなか、多くのプロジェクトでは、原点から「売り」を考えるようにしています。

 

今売れている商品であろうとも、売れ行きが鈍く成長性を高める商品であっても、その商品が持っている「潜在力」を知るためには、そもそも論で考える必要があるためです。

 

多くのトップセールスマンの営業トークを分析すると分かりますが、売れる営業マンは、お客様が買う理由をピンポイントで抑えにいきます。

 

この「お客様が買う理由」というのは、画一性がなく通常はいくつかのパターンに分かれているので、厄介なのですが…

トップセールスマン達は、雑談や商談の中から、その「理由」を鋭く察知していき、買う理由づけを強化し、買わない理由をどんどん削いでいきます。

 

皆がみな、このような職人技的な商談技術を身につければ、業績向上における苦労はないのですが……このような特殊技は簡単に教育で伝授できるものではありません。

 

様々な周辺知識、人間心理の熟知、自分自身のメンタルコントロール、いわゆる交渉術等、広範な知識と経験、努力の蓄積によって成り立つものだからです。

 

ただ、焦点を絞っていけば、「周辺知識」「特定の状況下における人間心理」などは、パターン化が可能になり、組織的な営業力強化の武器を手に入れることは出来ます。

 

例えば、駅の看板をセールスするトップ営業マンがいたとしましょう。

都心のターミナル駅となれば、1カ所設置するだけで、数百万〜一千万円近くの掲載費が必要です。

おいそれと手がでる金額ではありません。

 

そのような難しい商品でも、トップ営業マンは、巧みにセールストークを繰り出して高額商品をみごと販売します。

 

・宣伝効果が高く、それ以上の利益が期待できる。

・  自社の存在価値を知らしめる(プライド)

・  地方から来たお客様の安心材料を提供できる(顧客サービス)

 

など、同じ商品であっても、お客様が、看板にお金をかける「理由」は異なっていることを知っていて、そのゴール(買う理由)に向かって、営業トークを組み立てていくのです。

 

・新規開業のお店なのか。

・老舗企業なのか?

 

提案先企業の「状況」を抑えたうえで、最初のトークを切り出していきます。

 

その「状況」から推定される「課題や問題」をさりげなくトークに織り交ぜながら、興味を惹き出していきます。

 

新規開業であれば、その土地におけるお客様の流れや行動パターンを提示しながら、一般的な宣伝広告手法が聞きにくい事。

売れている企業が取っている宣伝広告手法など、暗に自社商品(看板)が有利に働くような“前提となる課題”を布石としてうっていきます。
老舗企業であれば、時代の変化や、その時代変化を上手く捉えて成功している企業の実例などから、提案先企業に問題点があることを気づかせていきます。

 

そして、その「課題や問題」を充分に認識させた上で、そこから発生する不利益や不満足など、足りないものをイメージさせていっているのです。

 

事例でいけば、看板を出さないことによる経済的不利益などです。

通行客が何人いて、何人が認知して、何人が行動するはずなのに…といった機会損失が明示できれば、説得力は増していきます。

 

このプロセスを経て、お客様は「購入する理由とその裏付け」を明確に手に入れることができ、商談は契約へと導かれているのですが…

 

多くのケースでは、この「裏付け」を用意しているところが少ないのです。

 

買い手の購買心理から逆算していけば、この「購入する理由」と「その裏付け」は必須準備物となります。

 

この必須準備物が用意できていないということは、充分に顧客になるチャンスがあった見込客も取りこぼす行為に他なりません。

 

ムダな活動をしている営業マンの行動も必要経費も勿体なければ、不正確な先入観を抱かせてしまったお客様にも失礼です。

 

これは、個々の営業マンの責任範囲ではありません。

事業責任者の責任範疇です。

 

従って、お客様が購入する理由とその裏付けは企業として準備する必要があります。

 

・  なぜ、お客様は当社商品を購入する必要性があるのか?

・  その背景となっている裏付けはなにか?

・  その裏付けの根拠は正しく、客観性があるのか?

 

セールスを組み立てる上での論拠となる部分が整理していくことが大切です。

 

そして、出来る売る限り「マニュアル化・言語化」していった方がいいでしょう。

 

・  アプローチの時の方法とお客様の心理状況。

・  初訪ブロックのパターンと突破方法

・  面談時におけるゴール(買う理由のイメージ化)誘導法

・  誘導プロセスにおける反論とその予防法または対処法

・  買う理由づけへのテストクロージング法と反応対処法

・  買う理由づけの論拠と裏付けとなる事実

・  クロージング時のパターンとその際の顧客心理

 

など、営業活動を細かく分解して、パターン事に「証拠」「根拠」「証言・証明」などの裏付けとなる論拠が必要な部分をピックアップし、しっかりと調査・整理していくことが、結果として営業部隊の「武器」となるのです。

このように営業マニュアルを整備しましょう…というと、契約にたどり着くまでの流れをイメージされる人が多いと思いますが、そこだけに焦点をあてると大きく論点が外れてしまいます。

正しくは、お客様に商品が商品を理解して、納得して、自分にとって利益や満足が得られる…と確信するまでの流れ…とイメージした方がよいでしょう。

そのための「裏付け」なのですから。

御社では、業績向上のための活動として、個々営業マンの力量だけに頼ることなく、組織的に「武器」を準備し、全社一丸となった戦闘態勢を築いていますでしょうか?