第223話 営業の対人能力が向上しない理由

2016.8.30

 

 

「能力のない人、適性のない人にいくら努力をさせてもムダ というのは、少しヒドイですね…」

 

先週のコラム「組織を成長させる《社員との関わり方》」は、良くも悪くも様々なご意見を頂戴しました。

 

その通りだ! と同意する人もいれば、 人の可能性を摘み取るのでは? と反対意見の人もいました。

 

正解か不正解かは、置かれた立場やこれまでの経験によって意見が分かれますが、本コラムは「自己啓発」を切り口にしておらず、「営業と事業成長」を切り口にしているので前回の主張を崩すつもりはありません。

 

経理や製造のように、一定の手続を覚えれば仕事が成り立つような職種であれば、能力・適性も後天的に強化することは充分に出来ると思っています。

 

しかし、営業に必要な「対人能力」は別です。

 

他者との関わり方は、親、学校の先生、友人、恋人、仕事仲間、上司など赤ちゃんから今に至るまでの環境から育まれています。

 

環境が変われば、人も変わるという認識は、私も同意します。

 

ただ、対人能力に限っては、ちょっとやそっとの環境変化で能力が変化するかというと極めて懐疑的です。

 

 

心理的に見れば、幼児期から青年期までの親などの養育者の影響によって、「私はこのように生きる」「このように他者と接して生きていく」という人生の脚本を完成させると言われています。

 

人生脚本は、突っ込んで勉強したことがありますが、問題点を自己認識出来ても「思考のクセ」なので、そうそうに治るものではありません。

 

そうした経験を踏まえ、第三者からの説得や教育訓練で、対人能力に変化が起きるとは到底思えないのです。

(キッカケは作れますが、それも困難です)

 

また、脳科学の視点から見ても「環境を吸い取る“脳みそ”自体が、遺伝によって規定されている」という説もあり、これは着目すべき視点だと藤冨は捉えています。

 

子供の顔が、両親に似るのは、誰もが認める事実です。

身長や体格、肌、髪、目の色も、両親と似るのも誰もが認める事実です。

 

では、脳の構造は?

 

と聞けば、ここだけ違うというのは、明らかに違和感があるはずです。

 

私たちの記憶や学習、運動機能は、神経細胞間を接合する「シナプス」の活動によって規定されていると言われています。

 

環境によって、反応したシナプスが、連続点火することで、神経回路が強化され、記憶の増強、学習効果の定着、運動機能の向上へと繋がっていくのですが…

 

幼子から二十歳前後までの性格形成時期に、この環境によって反応するシナプスが強化されると見るのは、なんら不思議なことではありません。

 

つまり「親のシナプスの活動パターン」が子にも強く影響するのは、自然なわけで、物理的にも環境的にも「脳」は、親の影響を強く受け継ぐと考えるのが、最も自然な理解なわけです。

 

 

心理学的にみても、脳科学的に見ても、長年培った習慣…つまり対人能力は、極めて変化しにくいものと捉えることが出来るのではないでしょうか。

 

もちろん、この親が与えた環境で育った自分に違和感を抱くことができれば、自己成長は促すことは、可能です。

 

本人が変わりたい。

なんとか脱皮したい…

 

という「変化・成長への切望」という強い動機づけがあれば、対人能力を向上させることは出来るはずです。

 

しかし、第三者に強制されて出来るようなものではありません。

 

つまり人間は外部からの刺激、上司の命令や教育訓練だけでは、変化成長出来ないということに繋がっているのです。

 

これを事実として厳粛に受け止めると、人が怖い…と擦り込まれた対人能力の持ち主には、テレアポや飛び込みなどのハードなコンタクトは、ずっと苦手意識が付きまとうでしょう。

 

自分の意見や行動を厳しく抑制されてきた人は、自分の意見と相手の意見の接点を見いだして、両者ともに良い関係を築くような突っ込んだコミュニケーションは訓練しても中々出来るようにはなりません。

 

自分が変わろうとしない限りは…。

 

 

そんなことを言ったら、営業マンは育成ができないじゃないか?

 

というご意見もありましたが、それは前回のコラムでも申し上げた通り、営業プロセスすべての活動を見直し、属人性に依存しなくても成果を出せる商品なり売り方を見つけ出し、人に頼る部分、仕組みに頼る部分を精査することで、解決が出来ます。

 

ただし、どうやっても、営業である以上、心理的に負荷のかかるプロセスは残ってしまうことが多いでしょう。

得意な人に任せることが出来れば良いのですが、中小企業では、おいそれと採用が出来ないことも多いでしょうから、何かしらの対策が必要です。

 

その対策として有効だと感じているのは、外部リソースの活用です。

 

コンサルタント、営業の外注業者、ホームページ制作会社、広告会社など、営業リソースをカバーする外注先は多種にわたっています。

 

商談のプロセスを簡略化することも、「知恵」があれば出来るので、適切な専門家とディスカッションすれば、必ず方向性は見えてくるはずです。

 

どうすれば、属人的な要素を減らして、全体の受注確度を上げられるか… 能力云々の前に、いまはどこも人手不足なので、こういったアプローチを一度は真剣に考えてもよいでしょう。

 

 

御社では、営業プロセスを分解して、属人的要素を減らす努力をしたことがありますか?

 

 

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