とことん「本質追求」コラム第95話 あの会社から買いたい…と思われる<事業の定義>を作り出す

「売れる営業マン」と「売れない営業マン」 
「業績の伸び続ける会社」と「伸び悩む会社」

これには、ある共通点があります。

営業マン向けの本を読んでいると、「誰から買うのか…が大事」とよく書いてあります。 
トップセールスマンは、ここを物凄く意識しています。

日本一ベンツを売る男と呼ばれる吉田満氏は「(メルセデスは)誰にとっても輝いて見える商品ですから、言うなれば自動販売機でも売れるんですよ」と現実を直視した上で、どうすれば圧倒的に売れるかを徹底して考え、行動に移しています。

吉田氏の顧客からは「いつも居酒屋で酒を飲み、趣味はパンチコという営業にメルセデスを買おうとしている人が相談するはずがない。(吉田さん)は、一生懸命努力して富裕層の要望を正確につかもうとしている」と評価され、ダントツの信頼感を勝ち取っています。

面白いのは、吉田氏の商談は、車以外のことばかりを話すとのこと。 
事業や不動産、さらに夜遊びまで、貪欲に知識を吸収して、どんな相談でも受けることができるようにしているそうです。

つまり自らの<定義>を「単なる車の営業マン」として位置づけているのではなく、「富裕層のプライベートアドバイザー」として位置づけているからこそ、強固な信用力を獲得しているのです。

事実、ほとんどが紹介商談ばかりだそうです。 
「どうせベンツを買うなら、あの人から買った方がいいよ」と。

吉田氏に限らず、突き抜けた成績を上げるトップセールスマンは、みな同じ共通点をもっています。

これは、会社にも同じことが言えます。 
業績が伸び続けている会社は…

「なぜ我が社は、この商品を取り扱っているのか」 
「どんな社会を築きたくて、この商品を取り扱っているのか」 
「我が社はお客様の未来をどうデザインすべきなのか」 

こういった「使命感」を中心軸にして、<戦略>を組み立てている会社が、売上を飛躍させているのです。

逆に「伸び悩んでいる会社」は、必死に商品やサービスを売り込むことだけに焦点があたっています。

「何をどうやって売るのか」 
「どんな商品ラインナップで事業を構成させていくのか」 
など「売り手の視点」ばかり。

導入期や成長期の商品なら、それでも構いません。 
しかし、成熟期の商品を取り扱い、購入者が「インターネット」で商品やサービスを検索するような業界では、「売り手の視点」だけでは、大きな飛躍は望めません。

これは、様々な業界のコンサルティング依頼を受けなか、つくづく実感していることです。

商品を購入するだけであれば、どこから買っても一緒。 
自分のニーズを満たしてくれるのなら、どんな商品を買っても一緒。 
今の日本製商品なら、どんな商品を買っても大した差はない。

いくら自社商品の優位性をアピールしたところで、顧客が知覚できる価値という視点からみれば、大きな差が生まれにくいのが成熟期の特徴です。

だからこそ、我が社が選ばれし存在であり続けるためには、全社一丸となってトップセールスマンのように振る舞う必要があるのです。

あの会社から買いたい」と…… そう思われる存在になることが大切なのです。

それを具現化するためには<事業を定義>を作り込む必要があります。

「購入者の視点にたった時、どうせ買うならあの会社から買いたい…」と思ってもらうためには、どんな使命感をもった救世主なのか…。

そう、その救世主であるためには、どのような「あるべき姿」をしていなくてはならないのか… 

これを明確にした「事業の定義」を身にまとったときに、初めて優れた実績を生み出す<戦略>が編み出されていくのです。

御社の「事業の定義」……もう定まっていますか。