とことん「本質追求」コラム第358話 一夜城戦略に学ぶメディア露出の心得

 

 

 

 

「先日、●●テレビの取材がありました。ウチの新商品が4月の初旬に放映される予定です。頑張った甲斐がありました」

 

5年ほど前に一度、商品の企画から上市までのプロジェクトをご一緒させてもらったのですが、今回の新商品は独力で立ち上げられました。

 

前回の段取りを下敷きにしたので、比較的スムーズに進められてきたとのこと。

 

営業はこれから…

という段階ですが、その前にプレスリリースを打って、反響を取るのと同時に新聞掲載を営業の武器に使う作戦を実行していた様です。

 

しかし、色々と質問をすると、大きなミステイクを犯す寸前だったのです。

 

確かに、以前のプロジェクトも革新的な新商品であったために、最初はプレスリリースからスタートしました。

 

でも、同時並行でプレスリリースを出す前に準備してかなければならないことは、全て用意周到に整えていたはず。

 

が、今回は「パンフレットを送っておいてください」とうと、「あっ、それはまだ…」との息を飲んだ返答が返ってきました。代理政策を取ると言うので、仕切価格などを質問しても未決定。

 

これはマズイと、早急に詰めるべき事項を叩き出して、テレビ放映日前までに決定・整備する様、お伝えしました。

 

これは、同社だけに限らず意外にも多くの会社で見受けられる現象なので、心してきたいこととして、コラムで共有させてもらうことにしました。

 

 

 

言ってしまえば当たり前のことかも知れませんが、「事業活動と売上の相関関係を事前にコントロール」することは、とても重要なはずです。

偶然に売上が立つのではなく、意図して売上をコントロールするのが、経営であり、マーケティングであり、営業だからです。

 

しかし、神経を行き届かせて緻密に戦術まで落とし込んでいる企業は少数派の部類に含まれるはずです。

 

今回のケースでいけば…

「メディアに露出する」→「反響がくる」→「売上が増える」という図式は誰でも描きます。

 

しかし、本当に上記のロジックだけで売上が増えるのでしょうか?

 

答えは、NOです。

 

確かに、全く売上に結びつかないということはないかも知れません。

しかし、露出しっぱなしで、無計画に待ち構えているだけでは、100%受注の取りこぼしが出るはずです。

 

反響=売上という、相関関係はあっても、因果関係にまでは昇華していないからです。

 

スタートを誤ると、大きいなチャンスを逃します。

 

特に、今回の様なテレビ露出となると、そうそう巡ってくるチャンスではありません。もしかしたら、今後はないかも知れません。

 

たった1度のチャンスかも知れないのですから、全力で立ち向かうべきだと思いませんか。

 

私は、同社に「一夜城戦略を計画し、実行に移す」ことをお勧めしました。

 

豊臣秀吉公が天下統一の最終仕上げとして行った小田原征伐を行った際に取った有名な戦略です。

 

ご存知の通り、一夜城と言えども、たったの1日で築城ができるはずもありません。

 

完成後、周りの木を伐採して、北条氏から見たときに、「たった1日で突如出来上がった城」と見せかけただけのことです。

 

築城まで30日。いや80日だ…と様々説がありますが、工期の短さが重要なのではありません。

 

相手に与えた印象が「勝因」なのですから、そこに着眼すべきです。

 

話を戻すと、新規性の高い商品が、ある日突如として「世に公開」されるわけです。

 

突如して出現した「一夜城」に似ています。

 

 

豊臣秀吉も、小田原征伐の時に、「キモとなる戦略の一夜城」だけに神経を尖らせ、他の施策にまで手が行き届いていなかったら、決して勝ち戦には繋がらなかったでしょう。

 

海も含めて四方八方に軍備を固め、強いプレッシャーをかけていたからこそ、トドメの一夜城で心理的に追い込めたわけです。

 

一夜城は、あくまでも象徴的戦略ということです。

 

そこに付随する様々な作戦の総力戦を企てていたから勝利を収めることができたのではないでしょうか。

 

新規性の高い商品を広める策も同じことが言えます。

 

新規性の高い商品が世に登場するわけですから、様々な人たちが反応してきます。

 

  • その商品を欲しがっている「見込み客」
  • その商品を売りたがる「販売代理店候補」
  • その商品アイデアをパクって、自社の市場を荒らす「競合他社」

 

様々な人たちが反応します。

 

テレビ放映の反響は、その内容にもよりますが当日、翌日に集中するのが一般的。

メディアがメディアに反応し、反響の連鎖が起きない限りは、非常に短い時間でさばかなくてはなりません。

 

だからこそ、放映からの反響に対して、迅速かつ抜かりなく対応していく様な準備をする必要があるわけです。

 

  • 事務員さんの電話対応マニュアル。
  • 見込み客をリスト化する手法の確立。
  • 見込み客を効率的に受注する手順と方法の整備・確立。
  • 代理店候補に送付する「販売店支援案内」「代理店契約」「仕切価格の決定」
  • 競合が参入意欲を削ぐ仕掛け作り。

 

1件でも受注を取りこぼさないことを想定した「営業体制」の準備から、競合対策まで、実施すべき準備は山の様にあるはずです。

 

反響=売上ではなく…

反響→的確な対応→売上というロジックで向き合うことが大切。

 

「段取り八分の仕事二分」と言いますが、この段取り(準備)というのは、わかっているつもり、やっているつもりになりがちです。

 

御社では、段取りをどこまで重視し、徹底させる環境を作っていますでしょうか?