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第359話 農兵分離から学ぶ「新規営業を勝ち戦にする法」

 

 

 

『方針を見直し、今期から会社の生まれ変わりに挑んでいきます。しかし、肝心の営業部の動きが悪くて…』

 

 

先日、クライアントさんからご紹介を頂いた企業と電話会談したときの第一声。

 

時代の変化を見越して新たな方針を打ち立て、主力商品を2〜3年かけて入れ替えていこう!と、取り組んでいるものの、肝心要の営業部が、糠に釘の状態とのこと。

 

詳しく伺うと、半年前に肝いりで立ち上げた新規事業に誰も本気になって挑もうとせず、これまでの販売実績もたったの2セット。

それも社長の縁故で売れただけで、肝心の営業部はなんと0更新を続けている状態。

 

強い危機感を抱いたまま、悶々と悩んでいる中、たまたま先週のコラムを転送してもらい読んだところ…嫌な予感で頭が一杯になったと言います。

 

コラムの中で指摘していた「営業のための準備」なんて、社内で感じたことがなかったからだそうです。

 

実際、すぐに営業マンに聞いたそうです。

「新商品を売り込むための武器を見せて欲しい」と。

すると半年前に作ったパンフレット以外、営業マンは提案書すら作成していなかったのです。

 

背中から脂汗が滲み出てきた…という社長と調整をして、急遽営業の人も参加させて「テレビ会議」を行うことにしました。

 

社長と営業部長・課長の3人とディスプレイ越しの初対面。

商品もさることながら、3人とも好印象で「売れる匂い」が漂ってこないのは、ある意味不思議でした。

 

が、3分話した段階で、問題の本質が見えました。

 

部品加工業である同社は、基本的にお客様からスペックを提示されて、その通りに製造し納品すれば売上が立つ経営をしてきました。

何かを提案することなど、一度もなかったのです。

 

技術畑の社長は、勉強熱心なために、書籍で覚えた営業手法が自然と身についていたので、これまで営業=提案できるもの…とタカをくくっていたようです。

が、現実は同じ営業といえども、下請けの営業窓口と、商品を担いで売る営業とでは雲泥の差どころか、別な職種と言っても良いほど、求められる機能、能力、仕事の範囲が変わってきます。

 

経理や人事総務などは、どの業界に行っても、求められる機能、能力、仕事の範囲はさほど変わりません。

多少の手続きの差はあれども、少し調べれば新しいことでも、着手することは可能なはず。

 

しかし、下請けの営業とモノを担いでの提案営業とでは、「電車の運転手」と「F1レーサー」との同じくらいの差があるわけです。

 

電車の運転手に、レーシングカーに乗って、結果を出してこい! と言っても結果など出せるはずがありません。

エンジンの起動方法、アクセルワークやブレーキングのタイミングなどすべての必要技能が異なります。

もっと本質的なことを言えば、「求められている結果」そのものが、全く異なっています。

 

これと営業の世界も同じ概念で捉えられます。

 

下請けの営業マンが求められている機能は「要求の正しい理解」です。

提案営業が求められる機能は、「欲求の正しい理解」

これは似て非なるものです。

要求は言語化されていますが、欲求は非言語です。

行動、習慣、背景、置かれている立場… 様々な要素を咀嚼して、欲求を感じとる必要があります。

 

また、能力も全く異なることが要求されます。

下請けは、事実の認識と管理能力が要求されます。

仕様の理解、納期の管理など、現実に基づいたマネジメント能力が必要不可欠だからです。

 

しかし、提案営業では、空想力と表現力が求められる成果に影響しています。

知らない誰かが、未知なる我が社の商品を使った時に、こんなメリットがあるはずだと…魅力的に表現する必要があるからです。

 

 

他にも…

  • 下請け営業において初動は意識されないが、新規営業は、相手の警戒心をいか
    に解くか?など初動が強く結果に影響している。

 

  • 下請け営業は、知っている人との商談のため、相手が聞いてくれることが前提に
    なりますが、提案営業は、基本的に聞いてくれないことが前提となっています。

 

  • 下請け営業は、売り手側の「納得」で商談が成立しますが、提案営業は、買い手への「説得」で商談が成立しています。

 

などなど、同じ営業と一括りには決して出来ないのが現実なのです。

 

これを一人二役でやろうとしていたのですから、そもそも無理があります。

 

人間そんなに器用ではありませんし、そもそも畑違いのことに取り組むわけですから「(営業)技術の教育」は、必要です。

 

何ら訓練も受けていないのに、戦場の最前線で戦ってこい! と命令したって、死にたくない彼らは、よほどのことがない限り突撃なんてしません。

 

初体験の提案営業で、結果が出なければ「能無し」のレッテルを貼られてしまうリスクを抱えているのですからある意味当然です。

 

 

営業戦略を練る上では、顧客心理だけでなく、従業員心理をも視野に入れて戦略・戦術を組み立てることが大事です。

 

 

織田信長は、これまで農民が戦の時にだけ「槍」や「剣」を持って戦う風習を改め、

「農兵分離」によって、戦う専門兵士を育てたという話は有名です。

 

農民によって目先の銭を稼がせ、兵士によって、未来の銭を作る。

 

これを今回のケースに概念的に当てはめれば…

 

下請けによって、目先の銭を稼ぎ、新規営業によって、未来の銭を作る。

 

つまり、戦う専門兵士(営業マン)の育成こそが、今同社にとっての喫緊の課題となっているわけです。

 

御社では、何か新しい取り組みをする際に、潔い人事制度からスタートさせていますでしょうか?

 

 

 

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