とことん「本質追求」コラム第384話 顧客目線に立つのは簡単なようで難しい。

 

 

 

『お客様の目線から自分達の商品を見つめ直すと、商談の雰囲気がまるで変わりますね』

 

 

先日、かなりニッチな工業製品の製造メーカーさんのプロジェクトを終え、3ヶ月の実践期間を経て、結果報告会を聞いてきました。

 

業界が古く、競争環境もほとんど変化がないため、売上高は、ここ数年横ばい。

既存のお客様からの追加注文のみで、新規開拓もほとんど行われていない状況でした。

 

そこで新規開拓のアプローチを導入しよう!とご指導させて頂いたのですが、正直言って『ヌカに釘?』と思うほど、プロジェクト期間中は盛り上がりに欠けていたのですが…

 

 

実践結果発表会を聞いてビックリ。

営業のみなさん、それぞれが『顧客視点』から提案書やアプローチブックをまとめあげていて、それを元に営業活動を実践。

 

3ヶ月で成果につながるような商材ではないのですが、それでも積極的に営業活動をした結果、受注に結びついた!との嬉しい報告も。

 

それより何より、今までとは違う商談の空気感が得られたとの報告に、ホッと胸をなでおろすのと同時に嬉しさも込み上げてきました。

 

顧客目線での営業というと、自分達でもできていると思いますし、そんなに難しいことではないように感じるものです。

 

儲かっている経営者、有識者、コンサルタント達も『顧客目線が重要』とあちらこちらで言いますから、あー分かった、分かった!と思いがちです。

 

 

しかし、言うは易し行うは難し…です。

 

なかなかどうして、顧客目線を全社徹底することは、容易ではありません。

 

「儲けを出す事業活動」と「顧客目線の徹底」は、下手に解釈すると相矛盾する行為だからかも知れません。

矛盾を抱えたまま事業活動が行われないように、利益の意味を全社員が正しく理解し、誰のため、何のための仕事かを突き詰めて「自社の利益」と「顧客利益」は矛盾していないことを、事あるごとに社内に浸透させる努力が必要となるでしょう。

 

 

また、顧客目線の思考を邪魔するもう一つの要素があります。

それは、売れる営業マンの存在です。

 

トップセールスは、顧客目線など意識をしなくても、売上を上げていきます。

いえ、逆に顧客目線と相反する言動で受注活動を行っているため、一般論としての顧客目線をバカにする人さえも存在しています。

 

彼らは、商談相手の欲を見抜き、心を揺さぶるテクニックを持っています。

巧みにテストクロージングで外堀を掘っていき、一貫性を保ちたい…という人間心理を利用して、クロージングで商談をまとめあげます。

 

まるで獲物を狩ることを楽しんでいるライオンのように、クロージングに焦点を合わせて心理の動きに集中しています。

 

これは、凡人のなせる技ではありません。

 

ほんの一握りの営業マンです。

 

教育や研修などで身につくようなものではなく、天性のものです。

 

 

このような営業をやるために生まれてきた人材の声が大きいと、顧客目線を社内浸透させることは、難しくなります。

 

 

こういった人材が組織にいる場合は、部門長や社長が自ら「自分と周りの人間は違う」ということを説き伏せ、社内浸透が図りやすい環境を整えることが大切になっていきます。

 

非凡な営業マンの自尊心を満たしつつ、「顧客目線」の徹底化を浸透させることができるでしょう。

 

ちなみに、顧客目線の営業活動を展開するには、大事なプロセスが存在します。

 

それは「顧客に聞く」という作業です。

  • 何がキッカケで当社の商品・サービスを知ったのか?
  • なぜ、当社の商品・サービスを購入しようと思ったのか?
  • 購入を決定する際、他に比較検討をしなかったか?
  • 何が決め手で当社商品を選んでくれたのか?
  • 商品・サービスの利用を通じて、解決された問題、課題等はあったか?
  • その問題、課題は、他にどのような問題を引き起こしていたか?
  • 商品・サービスの利用を通じて、満足した点は何か?
  • 不満に感じていること、改善して欲しいことはあるか?

 

などなど、顧客が商品・サービスを購入した際の「背景」を浮き彫りにすれば、売上を伸ばす方策は見えてきます。

 

「真のターゲットは誰か?」

「チラシやカタログをどう魅せていくか?」

「ホームページは、どうあるべきか?」

「提案書やアプローチブックでは、どのような紙芝居を見せるべきか?」

 

 

などなど、顧客の声からクリエイティブした「セールス戦術」は、当たり前ではありますが「顧客目線」に立ったものがアウトプットされます。

 

 

ただし、手前味噌ではありますが、こうしたプロセスは、私のような外野がいないとどうしても、売り手目線に戻ってしまいます。

 

人間は、慣れ親しんだ思考回路で、物事を考えがちですし、どうしても自分の都合の良い解釈をしてしまいます。

 

例えば、自社の打ち出したい「特徴」をお客様がどう捉えているのか知りたいときに、否定されにくいような聞き方を無意識にしてしまったりします。

 

ある意味、これは仕方のないことなので、やはりヒアリングも外部に依頼し、さらにヒアリング結果の分析も、第三者を交えて「自分の都合の良いような解釈」をしない工夫を施すことが、正しく顧客目線に立つ重要ポイントとなるでしょう。

 

顧客目線に立つ一番のメリットは持続可能な成長戦略が手中に収められることです。

 

御社は、正しく顧客目線に立った営業戦術を展開できていますでしょうか?