とことん「本質追求」コラム第390話 前提条件が変われば、アウトプットも変わる

 

 

 

「夏に発売した新商品の売れ行きがよくないです。大手での成功実績が多数あるマーケッターにコピーからデザインまで任せていたのですが…」

 

 

先週のコラムを読んだ社長さんから相談メールが舞い込みました。

「相手への理解、共感そして適応」というキーワードが引っ掛かったらしく、どうも今の打ち出し方が「スローガン」のように見えて仕方ないとのこと。

 

早速WEBサイトを拝見しましたが、確かに社長のおっしゃる通り。

スローガンにしか見えません。

 

しかし、スローガン…つまり「主義・主張」が、悪い訳ではありません。

その主義・主張が「相手」を理解した上での情報発信であれば、ターゲットの心の琴線に触れることは出来ます。

 

相手(情報の受け手)を立場、置かれた状況から推測する、相手の悩み、不満、不足、に刺さるような主義・主張であれば、パンチ力のあるキャッチコピーになります。

 

ただ、残念ながらご相談いただいた商品のWEBサイトを拝見する限り、そのスローガンは、相手の悩み、不満、不足に刺さるような働きはしていないように感じました。

 

結果的に思うように売れていない状況を察すれば、実際に刺さっていないと断言しても良いでしょう。

 

 

なぜ、このような打ち出し方になってしまったのか。

世間的にも「あるある」話ですので、掘り下げてみたいと思います。

 

 

同社は、大手で華々しい成功実績を上げていたマーケッターに「丸投げ」をしてしまいました。

 

あれだけの成果をあげた人なら成功するに違いない!と。

 

しかし、「第385話 情報氾濫時代のPR法。「出ない杭」は存在しないと一緒」に事例としてあげていますが、どん底からV字回復を果たした近大の「広告出稿の掟」を思い出してください。

 

  • 目立つこと
  • 大学名を隠しても「近畿大学」の広告であるとわかるような広告にすること
  • クリエイティブを代理店に丸投げにしないこと。

 

の3つの重要指針の中に「丸投げしないこと」が、入っています。

 

なぜ、丸投げがいけないのか?

 

それは、外部の人間は「前提条件」を履き違えるリスクが高いからです。

 

企業が持つリソース、過去の経験値、顧客との関係性、既存顧客が当社商品に好印象を抱くポイント(=自社の強み)…などなど、クライアント企業の全てを外部の人間が掌握することは容易ではありません。

 

しかも、言語化しにくい経験値などは、よほど外部の人間のヒアリング能力が長けていないと、顕在化すら出来ません。

 

前提条件が変われば、アウトプットも変わるのに、その前提条件を履き違える可能性があるわけです。

 

 

ちなみに、今回のケースでいけば、大手と中小の違い…という誰にでもわかる前提条件を履き違えているのでは?と私は感じました。

 

大手は、稟議を通じて、外部の目に触れる「広告」や「WEBサイト」を発表します。

全てが全てではないにせよ、比較的「当たり障りのない柔らかい表現」になりがちです。

 

否定的な受け止め方をする人が出ることを恐れるためです。

 

確かに、否定的な反応は、嫌なものです。

ただ、現実的に考えると「否定的な反応」が出るということは、それだけ「感情」に訴えかけることに成功した!と解釈することも出来るわけです。

 

私もこれまでに原稿用紙にして、2000枚以上のコラムを書き続けてきました。

時に荒っぽい主張をしたり、極端な考え方を発信してきました。

すると、メルマガ読者の「解約依頼」がたくさん舞い込む反面、好意的な感想メールも同じくらい送ってもらえるのです。

 

何かの主義・主張は、否定的な感情を抱く人がいる反面、好意的、同調的な感情を抱く人も同等数存在するものです。

 

もちろん、好き好んで「否定的な反応」を狙う必要はありません。

しかし、極端に恐れる必要もないのです。

 

最も恐れなくてはいけないのは、マーケティング予算を投じているのに、反応が取れないことのはずです。

 

大手企業は、当たり障りのない表現でも、企業のブランド価値でそこそこ反応が取れるかも知れません。

しかし、名も知らぬ中小企業が同じことをやっても、結果はついてきません。

 

売上に影響する要素を公式化すれば、一目瞭然です。

 

売上高=商品力×価格力×営業力×情報力×流通力

 

大手企業は、ネームバリューがあるために「商品力」を担保する土台があります。

あの会社の商品なら裏切ることはないだろう…と。

 

さらに「営業力」の営業マンの数がそもそも豊富です。

「情報力」も会社の持つブランド力+認知徹底をするだけの「量」も提供できます。

 

「流通力」も既存のネットワークがあるために、消費者の目に触れる頻度が高まります。

 

冷静に考えればわかりますが、このように大手企業は、売上に影響する要素の「総合力」が長けています。

 

多少、「情報力」で当たり障りのない柔らかい表現になったとしても、他の要素でカバーできてしまっているわけです。

 

 

大手企業で成果を出した有名人だから、我が社(中小企業)でも成功するはずだ!

と安直に捉えるのは危険です。

 

優秀であっても、決して丸投げせずに、自社の置かれた状況に一度フィルターを通すことが大事です。

 

自分たちの脳みそで考える作業を放棄しては、成功は手繰り寄せることは出来ません。

 

 

御社は、売上を上げるクリエイティブを外部に丸投げしていませんか?