「コロナの影響で、売上が3割もダウンしてしまって…。今期の赤字確定はまだしも、コロナが終息したら業績が回復するかどうかも分からず不安で、不安で眠れない日々が続いています」
先日実施された「コンサルEXPO」の参加者から悲痛なお悩みを伺いました。
業界全体が落ち込んでいる様で、構造的にみて「元どおりの状態」には戻らないのでは…と感じたので、尚更気の毒で仕方ありません。
今回のコロナショックは、特に「IT化がしにくいサービス業や小売業」に大打撃を与えました。
また、その周辺事業者にも、経済的な損失を余儀なくされました。
この流れは、単なる一時的な現象(コロナによる外出自粛)ではなく、今後「定着するであろう」転換点だと捉えておく方が賢明です。
もしかしたら、コロナ前の消費生活・社会に戻るかも知れません。
しかし、経営は「最悪を想定し、最善を尽くす」ことが肝要です。
元どおりの社会にならなくても「生き残りをかけた対策」が講じられれば安心です。
冒頭の社長さんも、コロナが終息した後の未来に向けて、未来の変化を意識しながら、自社の事業モデルを再点検、再構築していく必要があります。
具体的には「自社を取り巻く未来を予測する事」が大事です。
未来予測は、不確定要素ばかりだから意味がない!という人がいますが、未来を見通さなければ、事業計画なんて作れません。
現行体制も未来があってこそ、今の人員体制や設備などのリソースがあるはずです。
未来を見通すことは大切です。
特に自社を取り巻く環境を見通す必要があります。
どうすれば、見通しを立たせることができるか?
ピーター・ドラッカーが、著書『創造する経営者』の中で、的確に未来を予想するためのアプローチを紹介しているので、ご紹介しましょう。
『すでに発生したことの未来における影響を見通すこと。すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる』と言っています。
これは間違いのない「未来予測のアプローチ」です。
今起きていることを「原因」として捉え、その原因がどの様な「結果」を招くのか…を想定する訳です。
「因果関係」における「因(今)」を捉え、「果(未来)」を見通すのです。
事例を出して考えてみましょう。
まず「原因(今起きていること)」を捉えてみましょう。
・テレワーク
・外での飲酒制限(時間的制限)
・オンラインコミュニケーション
・マスク定着
などが消費生活者における「今起きていること」です。
その他、経済環境でも…
・莫大な財政出動
・貧困対策
などなど、将来に深刻な影響を及ぼす火種(原因)が転がっています。
この火種(原因)が、将来どの様な「結果」を引き起こすのか?を想定していきます。
【テレワーク(原因)】は、「帰属意識の低下」「出来る人と出来ない人の浮き彫り化」「人事評価制度のあり方の再定義」「移動コストの圧縮」「生産性の向上」「社会コスト(エネルギーコスト)」の抑制」「(仕事上の)飲み会の機会低下」「巣篭もりライフスタイルの定着」「地方移住の進展」
などなど、の(未来におきる)結果を引き起こしてきました。
これが続くのか、続かないのか。
次は、これを予測することがポイントになります。
その続く、続かないを推測する一つの方法として、本コラムで何度も紹介している「京都大学の名誉教授、中西輝政先生」の【本質を見抜く考え方】に倣うことをお勧めします。
中西先生は、「ある現象や問題」を「ある原理」に当てはめて思考することの大切さを推奨し、その原理を3通り提示しました。
① 動あれば反動あり
② 慣性の法則
③ 鹿威し
の3つです。
① 動あれば反動あり とは、一つの大きな流れのなかに、必ず逆の動きがあるとする見方です。
オンラインが一般化すればするほど、リアルが貴重になる、という見立てです。
② 慣性の法則 とは、1990年代から徐々に浸透して行った「IT社会」が、今後もさらなる進化を遂げながら、もっと深く我々の生活に入り込む…といったように、一定の流れはそうそう簡単には変わらない、とする見立てです。
③ 鹿威し は、株価高騰が続く中、何かのキッカケでバブルが崩壊し、株価が暴落するような現象です。つもりに積もった問題が、一気に吹き出す現象が起きるか否かとする見立てです。
先の例で行けば…
「帰属意識の低下」は、コロナ前でも若年労働者の意識変化に見られるように、帰属意識は低下傾向でした。となると、コロナ後でも、その流れは変わらず「慣性の法則」が働くのではないか、と見る方が自然です。
「地方移住の進展」は、より都心にこだわる人と、自然回帰を夢見て地方に移住する人で分かれる「動あれば反動あり」になると思いますが、その時、それぞれの価値観の変化も推論しておくと良いでしょう。
「大盤振る舞いの助成金や補助金」による莫大な財政出動(国債発行)は、国民からの借金です。
財務省の発表では対GDP比では世界最悪の状態(2020年237%)だと示しています。
1990年代のバブル崩壊時のように「鹿威し」が働き、状況が一変する可能性が高いまま現在に至っています。
このように、今起きていることを「原因」として捉え、その影響によって未来がどう変わるのかを「(未来における)結果」として捉えることで、近い将来に起こりうる「自社の事業環境」を見通すことが可能になります。
正しく現状を捉えること。
パラダイムシフトに備えて、生き残り作戦を描く最初の一歩となります。
御社は、アフターコロナ後の自社を取り巻く事業環境の変化を予測していますか?