とことん「本質追求」コラム第462話 事業再構築の成否は、最初の一歩でほぼ決まる

 

『事業再構築補助金は、絶好の投資チャンスですね。ウチも何か新しいことをやろうと思っているのでお手伝い頂けませんか?』

 

中小企業経営者の多くが注目している「事業再構築補助金」が、そろそろスタートしようとしています。

 

1社あたり最大6,000万円(①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開の採用枠は最大1億円)の助成金(投資額の2/3)が出るとあって、応募殺到は間違いなしと言われています。

 

補助金の対象は「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」又は「事業再編」の5分野。

5分野に分かれてはいますが、経済産業省が作成した手引書を見る限り、いずれも『新商品開発』にチャレンジすることが応募条件となっているようです。

 

ただ、あなたもお気づきの通り、新商品・新規事業を軌道に乗せるのは、決して簡単ではありません。

2/3の助成金が出るからと言って、失敗したら費用だけでなく時間的なロスなど痛手を被ります。

 

上述の社長も、そのリスクヘッジの一環として、オファーを頂きましたが、残念ながら諸事情によりお断りをさせて頂きました。

 

なので、ここでは個別のご相談には応じられないものの、一般的に共通する「新商品開発・新規事業の成功確度を高める2大ポイント」をまとめてみたいと思います。

 

  1. れる新商品を企画開発する

 

当たり前のことですが、売れる商品を企画しなければなりません。

 

先月のコラム「第457話  売上はセールス・トークが9割を握る?!https://www.j-ioc.com/wp2024/column/7650/」でもお伝えした通り、「成功確度を高める新商品の企画・開発の進め方」は、「売れる営業トーク」から逆算すると、手痛い失敗に泣くことはないでしょう。

 

これまで様々な分野における新規事業の立ち上げに携わってきた経験から言えることは、産みの苦しみがキツいプロジェクトの大半は、第一ボタンをかけ違えているケースばかりです。

 

出発点である新商品が「客ウケするお化粧」を施していなければ、売れないのは当たり前です。

したがって、なかなか思うように立ち上がらない…とご相談いただいても、藤冨が営業部隊にメスを入れることはまずありません。

 

一度、ボタンを全て外して、商品のあり方、見せ方からスタートする方が、結果的に見れば早いからです。

 

いかに、「客ウケするお化粧を施した商品」に仕上げるか。

 

売れる商品企画の立て方のポイントは、昨年11月に書いたコラム「第441話 売上から逆算する「成功確度の高い新規事業アイディア創造法」に記載しています。

覚えていない方は、ぜひ復習しておいてください。https://www.j-ioc.com/wp2024/column/7484/

 

これが1番目のポイントです。

2番目のポイントは、仮に売れる商品であっても、”それを製造・販売する事業体によっては成功しないこと”を改めて認識することです。

 

ここもしっかりと押さえておきましょう。

 

2. シナジー効果のある新商品・新規事業を選定する

 

相乗効果が得られない「新規事業」は失敗に終わる確率がとても高いです。

私自身も経験しましたが、ユニクロの柳井社長でさえ「魔の手」にかかることがあるくらいですから、驕り高ぶらずにしつこいくらいに自問自答すべきポイントです。

いえ、自問自答しても盲目になりがちですから、客観視してくれる外部の目を雇った方が無難です。

 

詳細は、4年ほど前に公開したコラム「第239話 失敗しない新規事業の選択」 https://www.j-ioc.com/wp2024/column/4335/ に記していますが、「成功はゴミ箱の中に」(2007年1月24日初版)という書籍の中で、柳井社長が「野菜ビジネス」に進出し、わずか1年半年あまりで事業撤退した時のことを回想してます。

 

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「野菜ビジネス」に進出したときにも失敗した。

本来新しく始める事業とは、ユニクロの力が生きる業種、もしくはプラスの相乗効果が望める業種でないといけない。そうでなければ、新しい事業に進出する意味がない。

これ、当たり前のことです。原理原則です。

僕も一応は原理原則だと知っていました。

けれども、本当の意味では、この原理原則を「わかっていなかった」

分かると言う事は、身にしみるということです。

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と書き記していました。

しかし、その3年後の2010年。

 

ユニクロは「シューズ事業」に参入しますが、5mm単位で在庫を持たなければならないビジネスモデルに苦戦し、これまた1年強で撤退。

野菜ビジネスとファッションでは、あまりにも顧客が求める「価値」は遠いものの、ファッションと靴はシナジーが働きそうです。

それでも、企画・計画・生産・物流・販売までのプロセスを一貫して行うビジネス モデルにおいて、一つの商品に対してサイズバリエーションが少ない事業モデルと、多い事業モデルとでは、勝手が違ったのでしょう。

チェーン店全体での在庫コントロール・ノウハウが活かせる事業モデルと活かせない事業モデルとでは、よくよく考えれば収益率に雲泥の差が出るのは火を見るより明らかです。

結果的に採算が合わずに潔く撤退していますが、もちろん、最初から分かっていれば誰だってやりません。

いえ、分かっているのではなく、身にしみる…と表現した方が良いのでしょう。

事業は、細部に神が宿りますから、やってみて身に染みなければ、気がつけないことなんて山ほどあります。

ただ、一つ言えることは「歴史に学んでいるか…第三者評価を交えてじっくりと吟味するプロセス」は踏む必要はあるでしょう。

いくらお客様から指示されるであろう商品・サービスであっても、それを運営する事業母体(売り手)との相性が合わなければ成功しないのですから。

 

1. 売れる新商品・新規事業の企画を感覚ではなくセオリー に沿って進めていく。

2. その新規事業は、自社の力が生きる事業、またはプラスの相乗効果が望める事業なのか、厳密に吟味する。

 

この2つが新規事業を成功に導く第一ボタンであることは間違いありません。

御社は、事業再構築補助金を活用して、次なる成長モデルを描きますか?

その中で、成功確度を高める2大ポイントを厳密なまでに意識して進めていきますか?

成功するのも、痛い授業料を払うのも、最初の一歩が大半を決めています。