とことん「本質追求」コラム​​第576話 コンセプト思考の人材は、モチベーションが高い!        

 

「顧客は何を求めているのか… 当社もこの意識を社員に浸透させてから、業績だけでなく社員のモチベーションがあがりました!コンセプト思考の人材育成は本当に大事ですね」

 

以前、プロジェクトをご一緒し、本コラムも熱心にご購読頂いている社長さんから先週のコラ
ムを読んだ感想と共に、嬉しい近況報告を頂きました。

同社は、強い営業部隊を持ちながらも、プロジェクトをご一緒して以来、営業企画部を新設し、コンセプト・セールスを徹底している会社です。

営業企画部が、営業現場の生の声を拾い上げ、最適な武器(商品の改良や販促物の製作)を営業に提供する仕組みを動かしているのですが…

ただでさえ強い営業部門が、戦略思考を持つ営業に生まれ変わったわけですから、さらに業績が伸びるのは、ある種アタリマエのこと。

この会社を見習うため、今日のコラムは、モノ売り思考の人材が多い組織とコンセプト思考の人材が育った組織を比較しながら、コンセプト思考の有用性について、改めてじっくり考えていきたいと思います。

まず、最初に質問します。

あなたは、業績があがるからモチベーションがあがると思いますか?

それとも、モチベーションが高いから、業績があがるのでしょうか。

 

卵が先か。鶏が先か。

どちらでしょうか?

ちょっと意地悪な質問をしました。

答えは、どちらでもありません。

 

答えは…

顧客が喜ぶ顔が見えるから、モチベーションがあがるのです。
商談で比較されても、競合に勝てるから、モチベーションがあがるのです。

 

人は誰もも好き好んで「負け戦」に行きたくは無いはずです。

ましてや、前線に出て血みどろになるなんて、誰だってイヤに決まっています。

アナロジーで考えれば、答えは明白はハズです。

それにも関わらず、世の中に「モチベーション研修」という存在があること自体、私から見れば、摩訶不思議なこと。

以前、藤冨も研修を依頼してきた組織に「研修の目的はなんですか?」と問うたことがあります。

すると「業績をあげたい」というので、こう申し上げました。

「現場の課題を知っていますか?」と。

表面的な答えが返ってきたので、さらに問いを深めてみました。

「現場が成果を生み出せない時…つまり失注している理由、お客様がウチを選ばない理由はなんでしょうか?」と。

ここがわからなければ、業績なんてあがるはずがないのに、案の定”口”が籠もってしまいました。

ならば、現場の課題を吸い上げ、負け戦の原因を突き止め、勝てる作戦を立てましょう!とコンサルティングの提案をしたところ、二つ返事で「やりましょう」となったのです。

結果を出したいのに、研修なんて意味ないことをやっても、金とドブに捨てるようなものです。

成果を出す構造は、極めてシンプルなのです。(構造はシンプルでも顧客心理は複雑ですが)

競合より優れたベネフィットを顧客に提供できる「売り物」を営業マンに渡すこと

または、今の「売り物」の切り口を再定義し、競合より優れたベネフィットを顧客に提供できる「売り方」を営業部に指導するしかありません。

 

藤冨の経験上、思うように業績が伸びない…と悩む企業は、営業部門のモチベーションが低いことが多い。

しかし、モチベーションが低いのが、売れない原因ではありません。

だから、モチベーション研修をやっても意味がないのです。
意味がないどころか逆効果になることの方が多いくらいです。
なぜなら営業マンの人たちは、競争力のない商品を売らされ、負け戦に辟易しているからモチベーションが低いのですから…。

ちょっと考えてみてください。

錆び付いた短刀しか持たされていない兵士が、ヤリや刀を持った敵陣に切り込めますか?

「こんなんじゃ勝ってっこないよ…ウチの殿は狂ったのか?」と陰口が叩かれるのがオチです。

それでも、だだ下がりになった兵士たちを集めて、銃を提供し、使い方を訓練したら、意識はどう変わるでしょうか?

「おっ?!これはすごい!!これなら勝てる!」と自然とモチベーションが高まるのが、手に取るようにわかるでしょう。

モチベーションは、成果が出せる道筋が見えて、初めて発動されるものなのです。

ヨーロッパの古い話が、とても参考になります。

ある石切り職人に「あなたは何をしているのですか?」と旅人が尋ねると、最初の職人はこう答えたそうです。

「見ればわかるだろ!炎天下の中で、この忌々しい石と格闘しているんだ!」と。

旅人は、他の石切職人にも尋ねました。

すると、ある石切職人は「私は、多くの人々が安らぎを求める教会を作っているんですよ」と答えたそうです。

忌々しい石と格闘していると認識した労働者は、下手をすると手を抜くかも知れません。

多少、正確性に欠けていたとしても、「これくらいなら良いか…」と妥協するかも知れません。
だって、硬くてなかなか切れない石に腹を立てながら仕事をしているんですから、ある意味当然のことだと思います。

一方で「私は多くの人達が安らぎを求める教会を作っている」と思いながら仕事をしている職人はどうでしょうか?

「地震が起きても絶対に崩れないようにしなきゃ」とか「見た目も惚れ惚れするほどカッコよく仕上げよう」という意識が働くのではないのでしょうか?

目先の利益を取ってこい!というモノ売り思考では、事件を犯した中古車販売業者と一緒の運命を辿りかねません。

しかし、誰にどんな満足を誰よりもよりよく提供しよう…というコンセプト思考で働く社員なら、自然と使命感が生まれてきます
この使命感が、モチベーションの真の源泉に繋がっているのではないでしょうか?

例え、自分の仕事が石を切っているだけだとしても、その仕事の果てに、誰かの満足につながっていると実感している人は、高い意識で仕事に取り組めるものです。

人々の幸せを願い、はるか遠い彼方に見える景色を夢見て仕事をする社員が増えれば、会社がよくならないハズがありません。

これは、揺るぎない真実であるはずです。

御社もコンセプト思考の社員を増やす体制づくりに…本気で取り組んでみませんか?