とことん「本質追求」コラム第584話 商品企画を成功させる3つのルール

「ウチの会長は、商品企画が大好きで、しょっちゅうアイデアを出しては社内をかき回すのですよ。何とかなりませんか?」

二代目社長から実の父親である会長の存在についてご相談を受けました。

親子関係があるので、的確な助言はできませんが…

説得方法や会長から商品企画の仕事を移譲する方法を提案すると「それ良いですね!」と賛同されたので、本日のコラムは、その内容をシェアしたいと思います。

まず最高権力者から大好きな仕事を奪い取るようなことをするので、感情を逆撫でせずに、一発で納得してもらう必要があります。

絶対に成功する保証できる方法なんて、ありませんが…
それでも、この話で拒否したら『会長、暴君になりますよ』という雰囲気を醸し出せば、成功確率はあがります。

具体的にどう言うか…

『ウチの社員には、自発的に考える人が一人もいません。。しかも“やらされ感満載”で、社内に活気もない状況です。自発的に考え、行動できる組織にしたいのですが…どうでしょう?』と会長に相談を持ちかけるのです。

まず、この提案にNOという人はいません。

次に、大前提の合意が取れたら、本題を提案します。

「商品の改良計画や、新商品の開発テーマは、チームを作ってやりたいのです。もちろん、テーマの決定、開発計画、マーケティング計画は、それぞれ発表してもらいGoかStopかの判断は、会長と私がやります。現場で問題意識を感じる風土を作って、自ら考え、行動し、成功させる経験をさせてあげたいのです。どうでしょうか?」と、売れない商品を連発する会長のことは、一切否定せずに、前向きな話だけを伝えるのです。

これでNOと言うなら、その理由が知りたいくらいです。

次は、Yesを貰えた瞬間の具体的な進め方です。

チームメンバーを選出したら、チームが商品企画をする上でのルールを紙に書き出し、社内に貼り出すのです。

チームの活動ルールを紙に書き出す最大の理由は、感覚を排除するためです。
新商品開発しろ、商品改良化で売上が伸びないもの、多くは「思いつきレベル」が原因です。

もちろん、新商品なり既存商品の改良には、アイデアや創造性は必要です。
しかし、そのアイデアや創造性も『誰も否定できない事実を積み上げた論理性』の上に成り立っていなければ、会長と同じように、学習することなく売れない商品を連発しかねません。

成功・失敗要因を的確に掴むには、『事実を積み上げた論理性』が必要不可欠なのです。

ちなみに、新商品や商品改良によって売上を伸ばすための要所は、たった一つしかありません。

消費者が欲しい・買いたいと思い、実際に使って役立ったか…。
これだけのことです。

ところが、あまりにもシンプルであるが故に、深く考えずに事業化計画を進めてしまうことが、多くの失敗を生み出しているのでしょう。

『消費者が欲しい・買いたいと思い、実際に使って役立つ商品はどうやったらできるのか?』

的確なアウトプットを導き出す『商品企画』のルール化ポイントを3つ列挙してみましょう。

第1のルールは、商品を欲しい・買いたい…という「幻想(ファンタジー)」ではなく、その商品を人々が必要する背景や状況といった「事実(ドキュメント)」をドキュメント化すること…です。

アイデアマンの人は「こんな商品があったら売れる!」とスグに具体的なモノレベルに落として考えてしまいがちです。
ファンタジーの世界で商品化を勧めるので、売れたり、売れなかったり…博打のような駆け引きになってしまいます。
消費者は商品を購入しているのではありません。商品を購入することで得られるベネフィットを買っています。
✔︎ある状況や背景が、どんな問題を生み出しているのか
✔︎その問題は、どうやって解決することが最善なのか
✔︎他の代替案や競合商品を消費者はどのように評価しているのか
✔︎具体的にその消費者はどこにいて、どうやってアプローチできるのか

こういったファクトをドキュメント化しておくのです。
こんな商品があったら売れる!というのは、このファクトを吟味した上でないと、正しく判断できないと肝に命ずるということが大切です。

第2のルールは、問題を解決するために最も適切な商品の形をクリエイティブに考え出すことです。

この時の大切な視点は2つです。
1つ目は、代替案や競合の分析。代替案や競合より、何が優れていて、消費者はそれをどう評価するのか?という視点が漏れてはいけません。
2つ目は、期待を裏切らない商品開発が実現できるか否かです。
言うまでもなく口コミ社会となった今は、消費者の期待を裏切った企業はダメージを受けます。逆に期待を上回る満足を勝ち取れたら、リピートや紹介が始まります。
✔︎代替案や競合との比較分析
✔︎製品化における性能や特徴は、顧客のベネフィットを満たしているか

頭のなかだけでなく、文書化して、客観視することが大事です。

第3のルールは、実際に想定顧客や既存顧客にセールスをしてみること…です。
ポイントは、商品が欲しいか否か?という「感想」ではありません。
商品に至る背景を説明し、共感を得られるか?が大事です。
① 人々が置かれた現状
② そこにおける問題点
③ 課題解決の方法(代替案や競合)
④ 比較優位性を打ち出したアイデア(商品開発テーマ)を確認するのです。

①〜③のファクトの認識がズレていたら、商品化できても、営業でめちゃくちゃ苦労するか、不発に終わって撤退に追い込まれます。
大事なのは、ファクトの確認です。
幻想や感想では、いたずらに組織を混乱に導くだけです。

以上、ざっくりとした概要になりますが、この3つのルールさえ守れば、チームで自社の新しい未来を描くことが可能になります。

御社は、商品企画のルール化を策定していますか?